一歩前進「富士登山鉄道」、今年は正夢になるか 既存の道路を活用してLRT敷設、ハードルは高い

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突飛なアイデアにも思える「富士山登山鉄道」。だが、富士山に鉄道を通すという構想は以前から存在した。

戦前にも計画があったほか、1960年代には地元の交通・観光事業者である富士急行が地下ケーブルカーの建設を計画。免許申請もしたものの、自然保護を重視して1974年に申請を取り下げた。2015年には、富士山周辺の自治体や観光関係者などでつくる富士五湖観光連盟が「環境負荷の抜本的改善策」として富士スバルライン上への鉄道整備を提言したが、その後の進展は見られなかった。

県も1990年代から2000年代前半にかけ、富士スバルラインの建設費償還期間が2005年に終了した後の活用策として、鉄道を含めた新たな交通システムの導入可能性を検討した。中には、「ホバークラフトはどうかといった案もあった」(県知事政策局・柏木貞光政策企画監)という。だが、過去の検討では電気バスや低公害車などの自動車系交通が有望とされた。

知事の公約が発端に

今回の登山鉄道構想は、2019年1月に初当選した長崎幸太郎知事が選挙公約に掲げたのが発端だ。県は同年7月、有識者らによる「富士山登山鉄道構想検討会」(会長・御手洗冨士夫経団連名誉会長)を設置し、実現可能性について議論を開始。翌2020年2月の総会で、富士スバルライン上にLRTを敷設するのが「最も優位性が高い」とする骨子案を了承した。

富士スバルライン上に軌道を敷くという考え方は2015年の富士五湖観光連盟の構想と似ているが、藤巻美文知事政策補佐官は「観光連盟の検討は(鉄道を)敷いたらこういう効果があるだろうという内容だが、こちら(県の構想)は本当に敷く場合に何が必要かが焦点で、まったく別」と説明する。

富士山登山鉄道のイメージ。車両の色や形は仮のものだ(画像:山梨県、一部記者修正・加工)

近年、富士山への来訪者は訪日観光客を中心に増え続けてきた。県の統計によると、2019年の5合目来訪者数は世界遺産登録前の2012年に比べて約2.2倍の506万人に増加。富士スバルラインは2014年以降、規制強化によってマイカーの台数は減ったものの観光バスが増加し、CO2排出量は2012年から18年までに約1.4倍に増えた。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会や諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は2013年の世界遺産登録の際、収容力を踏まえた来訪者管理の必要性や、自動車による排気ガスへの懸念などに対する対策と改善が必要と指摘している。鉄道は自動車と比べて環境負荷が低いだけでなく、乗客数のコントロールによって来訪者管理もしやすいというメリットがある。

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