関越道の立ち往生で脚光、「岩塚製菓」の実像 40年前に台湾・旺旺集団と提携、高配当で恩返し

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この巨額の受取配当金は、岩塚製菓が保有する台湾のスナックメーカー、「WANT WANT CHINA HOLDINGS LIMITED」(以下、旺旺集団)からのものだ。

旺旺集団は台湾から中国大陸に進出した総合食品メーカーで、2019年の売上高は円換算で3313億円にのぼる。

岩塚製菓も、旺旺集団も、コロナ禍による巣ごもり需要により売り上げが好調だ。その結果、2021年3月期の旺旺集団からの配当金は約22億円と、記念配当のあった2020年3月期と並ぶ過去最高額。岩塚製菓の予想を大きく上回り、 業績予想を上方修正した。2021年3月期は売上高232億円、経常利益31億円を見込み、2割の増益を予想している。

商品に惚れこみ、技術提携

岩塚製菓と旺旺集団は40年近くのつながりがある。旺旺集団の創業者、蔡衍明(さい・えんめい)氏が1970年代に来日した際に岩塚製菓の商品に惚れこみ、技術協力を依頼したことがきっかけだ。説得の結果、1983年に正式に技術提携を開始し、その対価として岩塚製菓は旺旺集団の株主となった。岩塚製菓の技術は、旺旺集団の発展に大きく貢献した。

旺旺集団のホームページには「岩塚製菓との出会いをなくして、今の旺旺集団の発展はないと言っても過言ではありません」との文言がある。岩塚製菓にとってもまた、同社はなくてはならない存在だ。

岩塚製菓の阿部雅栄経営管理本部長は、前出の人気商品「バンザイ山椒」について「旺旺集団が中国で発売する商品の、本場の山椒の味わいを参考にしたことも人気が出た要因ではないか」と分析している。岩塚製菓の海外展開にも重要な役割を果たしており、旺旺集団の販売網を通じてアジア圏へ商品を輸出している。

岩塚製菓では、旺旺集団の中国工場で働く従業員を技能実習生として毎年40人ほど受け入れる取り組みが、約30年前から続いている。 最近は中国での賃金上昇や工場の技術向上などにより、日本で働きたい中国人実習生が以前より減っているが、前出の阿部氏は「技術の研修だけでなく、日本にいる1年間で花火などの日本文化や、語学を学んでもらうことで評判が良いようだ。親戚のような存在と思って受け入れている」と話す。受け入れる実習生は旺旺集団の従業員に限っており、つながりの深い企業同士の交流という側面が強いようだ。

40年前に始まった技術提供による「恩返し」として、営業利益の10倍以上もの配当金を受け取ることとなった岩塚製菓。今回の関越道の一件でも、その企業姿勢が表れたと言えるだろう。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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