沖縄米軍部品落下3年、誤解される当事者の願い 普天間基地反対の主張は一度もしていない

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事故当時、娘は3歳だった。講演会や政府要請に行くとき、いつも「行かないで」と泣いた。今は6歳になり、泣くどころか、「お母さん、頑張ってね」と送り出してくれる。娘の成長を頼もしく思う半面、苦しさもある。

「大人の3年と子どもの3年は重みが違う。一番手をかけてあげたい時期に寂しい思いをさせてしまった」。その大切な3年間を費やして、子どもたちが安心して学び、遊べる環境をつくろうと、活動を続けてきた。

しかし「壁」は想像以上に厚く、「きつい」「孤独」と思ったことも、一度や二度ではない。それでも「ここで諦めたら何も変わらない」と行動を続ける。今月8日は沖縄防衛局と外務省沖縄事務所、14日には宜野湾市長に陳情書を手渡した。

訴えているのは「子どもの命の問題」

「チーム緑ヶ丘1207」が3年間ずっと訴え続けているのは、「保育園上空の飛行禁止」だ。基地反対や基地撤去といった主張は、一度もしていない。与那城さんが言う。

「沖縄の子どもたちの空の安心安全を一緒に考えて」と訴える与那城千恵美さん(筆者撮影)

「基地に反対なら反対でいい、賛成なら賛成でいい。私たちが訴えているのは、基地問題ではなくて、子どもの命の問題です。普天間飛行場の閉鎖、撤去を待っている時間はない。

今のままでは、いつかまた事故が起こると思う。全国どこに住んでいても、自分の子どもの上を米軍機が飛ぶのは嫌じゃないですか? 沖縄の子どもたちの空の安心安全について、一緒に考えてください」

落下物事故があった3年前、緑ヶ丘保育園の園児が保育士に尋ねたという。「なんでお空から落ちてくるの?」。こんな疑問など思いもつかない環境をつくるため、お母さんたちは行動を続ける。

眞崎 裕史 ノンフィクションライター

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まっさき ひろし / Hiroshi Massaki

1981年生まれ。高知新聞記者、琉球新報記者を経て、2020年5月からフリー。高知新聞時代は労働や福祉、戦争体験者の取材などに注力。同紙の戦後70年企画「秋(とき)のしずく 敗戦70年といま」の取材班として、第20回新聞労連ジャーナリズム大賞優秀賞を受賞。現在、ノンフィクションライター、フォトグラファーとして「米軍基地と人々」「LGBTQと社会」などをテーマに沖縄県内外のメディアに執筆している。

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