ネズミの笑い声は「高音すぎて」人に聞こえない ネズミだって「嫉妬心」を感じる生き物だ

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だいぶ話が横道に逸れたが、笑っていると思われる動物のほとんどは実は笑っているとは断定できない。今のところ、〝笑う〟という事実が確認されている動物は、われわれ人間、その親戚ともいえるチンパンジーやゴリラなどの類人猿、そしてネズミだけである。

そのほかの動物が絶対に笑わないというわけではないが、まだ確認されていない。

人間にとっての笑いは、集団生活を円滑に進めるためのツールともなっている。笑いと健康を結び付けた研究も数多く存在する。

ごくごく小さなネズミでも笑うことが確認されたということは、ほかの動物──とくに群れで集団生活を行う動物も笑う可能性が高いと考えて間違いないだろう。

あの有名なイギリスの生物学者チャールズ・ダーウィン(1809~1882)も、類人猿が笑い声をあげることに気がついていた。しかし、ネズミが笑うという論文が出たのは、つい最近の1999年のことである。それまでは、類人猿以外の動物は笑うか否かという侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がされていたが、類人猿以外で初めて笑う動物として登場したのがネズミなのである。

そのときの世間の驚きようは想像にかたくない。

ネズミの笑い声は50000Hz

2016年には、ネズミが笑うときの表情や活動している脳の部位が解明された。

ネズミは、母ネズミに可愛がられているときや、子ネズミ同士でじゃれあっているときに笑い声をあげる。実験では、驚くべきことに人間がくすぐってネズミを笑わせることもできたという。

ウソのようだが、真剣な科学の実験である。くすぐられたネズミは、もっともっととせがむように実験者の手にまとわりつく様子を見せるのだ。それでは、ネズミはどのような声で笑うのだろうか。ネズミの笑い声を聞いてみたいと思った人もいるのではないだろうか。

しかし、残念ながらそれはかなわない。

人間の耳が聞くことのできる音の可聴域は、およそ20Hz(ヘルツ)~20000Hzと言われている。しかし、20代から聴力は徐々に低下し、可聴域は狭まってゆく。30代以降で16000Hz以上の高い音域が聞こえる人は稀(まれ)といえる。若者にしか聞こえないといわれる高周波のモスキート音が、大体17000Hzくらいだ。

そして、ネズミの笑い声はなんと50000Hzである。ネズミは私たちに聞こえないくらい高い高い音で笑っているのだ。もちろん人間の耳では聞こえないから、ネズミの笑い声を確認するには周波数を測定する機器が使われる。

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