コロナ変異種「重症率が同じ」でもヤバい理由 出現元のイギリスはクリスマスもロックダウン
公衆衛生の専門家たちは、今回の変異種の出現によってウイルス根絶に向けた規制強化の緊急性がさらに増したと語る。変異は繰り返し起こる現象だからだ。
「ウイルス根絶の重要性は一段と高まってきている」。こう話すのは、エディンバラ大学で国際公衆衛生学プログラムの責任者を務めているデヴィ・スリダール氏だ。「ウイルスが広まれば、変異も増える」。
致死率が変わらなかったとしても死者は増える
ジョンソン首相が突然方針を翻したのは18日に内閣小委員会の会議が開かれた後だった。この会議で政府の科学諮問委員会のメンバーはあるデータを提示した。それまでの1週間だけでロンドンの新規感染がほぼ2倍になったこと、そしてその大半が新たな変異種によるものであることを示すデータだ。
政府のパトリック・ヴァランス首席科学顧問は、変異種によって致死率が高まったり、ワクチンに対する耐性が強まったりしたことを示す証拠はないとしている。が、医師であり、医学研究者でもある同氏によると、従来のウイルスに対して23カ所の変異があったことが科学者によって確認されている。異例の多さであり、さらに変異のいくつかはヒトの細胞に結合する部分で起きている。ヴァランス氏は、これによって感染力が高まった可能性があると話している。
感染力が強まれば患者の増加に拍車がかかり、ひいては入院数や死者数の増加につながる。イギリス政府は新たな変異種の広がりについて世界保健機関(WHO)に報告を行ったとしている。
ジョンソン首相とともに記者会見に臨んだヴァランス氏は次のように語った。「この変異種はこれまでよりも簡単に広がる。制御するには、さらなる対策が必要だ」。
今回、ロックダウンが適用されたのはロンドンの全域とそれを取り囲む南東部の大半。人口密度の高い地域で、イギリスの全人口の約3分の1に当たる2000万人近くが対象になった格好だ。規制は少なくとも2週間続けられ、その後の対応は12月30日に状況を再度見極めた上で決定される。
政府は緊急の外出、通院、健康維持のために屋外で行う運動を除いては自宅にとどまるよう求めている。対象地域の外側に住んでいる人にも、ロックダウン対象地域に入らないよう注意を促した。対象地域内の住民は夜をまたいでの外出や外泊が禁止されている。外国への渡航には強い自粛が呼びかけられ、生活必需品以外を取り扱う店舗、ジム、映画館、理美容室、ネイルサロンは休業となった。