【産業天気図・百貨店】10年度は景気底打ち感、リストラ効果で「曇り」に小幅改善、ただ中期の生き残り競争はやはり厳しい
10年4月~9月 | 10年10月~11年3月 |
2009年度は土砂降りだった百貨店業界。10年4月から11年3月までは、1年間終始「曇り」に若干回復する見通しだ。
2009年の業界売上高は1991年の9・7兆円から6・5兆円に後退し、「将来的には5兆円程度に落ち着く」と見る業界関係者も多い。こうした環境下で各社の09年度業績は大幅減収減益、もしくはリストラ関連特損などで赤字転落も相次いだが、10年度は最悪期を脱することになるだろう。10年に入り、既存店前年同月比のマイナス幅が縮小しつつあり、店舗によっては前年並み、若しくは前年越えを達成するところも出てくるなど、底打ち感が出てきているからだ。
10年度の百貨店各社の業績は、09年度を底にして営業増益となる会社が多くなりそうだ。三越伊勢丹ホールディングス<3099>は前期の三越における約1600人早期退職という大リストラに、不採算店閉鎖、組織統廃合効果が出る。J.フロント リテイリング<3086>も3月、百貨店事業を1社化(大丸松坂屋百貨店)するなど、組織統廃合効果と店舗運営の効率化によって営業増益が見込める。中下位の百貨店では、松屋<8237>がやはり浅草店の縮小営業と人員減によって赤字脱却を見込み、北陸地盤の大和<8247>も店舗閉鎖によって赤字脱却を狙う。
市場縮小に合わせた店舗や人員のスリム化を進めている百貨店業界だが、今後、売り上げの比重高いアパレルをどう建て直すのかが課題だ。大丸の大阪心斎橋店が買収した元そごう心斎橋店を北館としてファッションビル化したのは、百貨店が取り逃してきた若い年代を取り込むため。だが、ファッションビル化を指向するのであれば、より効率的な運営体制が必須になる。百貨店ならではの付加価値商品の追求と、若年層へのアプローチをどう両立させるかが重要になる。
10年秋には三越銀座店が増床し、松屋銀座店などとの競争が熾烈になる。11~12年にかけては、大阪駅周辺の百貨店が相次ぎ増床、JR大阪三越伊勢丹がオープンするなど、いわゆる大阪百貨店戦争が待っている。共倒れになるのか、あるいは勝者と敗者がはっきりわかれるのかはまだ分からないが、3月25日、ビッグニュースが飛び込んできた。
経営統合に向けて資本業務提携を結んでいたエイチ・ツー・オー リテイリング<8242>と�島屋<8233>が経営統合の中止を決定した(業務提携は継続)のだ。救済型統合が多かった百貨店再編のなか、勝ち組同士とも言われる両社の経営統合はいろいろな意味で注目を集めていたが、破談となったことで今後どのような生き残り戦略を追求するのかが焦点となる。いずれにせよ、それぞれの地域で百貨店同士の競争が本格化することは間違いない。
(高橋 志津子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら