プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー著/中山元訳 ~経済の駆動因は何か新訳で「新たな精神」を考える

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー著/中山元訳 ~経済の駆動因は何か新訳で「新たな精神」を考える

評者 橋本努 北海道大学准教授

 ビジネスマンの本棚には欠かせない、古典中の古典の新訳が出た。通称「プロ倫」と呼ばれる本書は、「近代資本主義とは何か」を考えるための壮大な歴史物語。マルクス『資本論』と双璧をなす経済人の教養書だ。

さっそく岩波文庫の大塚久雄訳と読み比べてみたところ、ぐいぐいと読ませる。たとえば冒頭、旧訳では「そのことの余波は今日になっても経済上の生存競争でプロテスタントの立場を有利にしている」という部分を、新訳は「その余波として、プロテスタントたちは現在に至るまで、経済的な生存競争では有利な立場に立っている」と訳し直している。あるいは「いちじるしく近代経済の相貌を呈している国民」という部分を、「現代の資本主義社会にふさわしい特徴をそなえた諸国の住民」と訳し直している。リズムがあって息遣いの清新な文体だ。

小生は、学生時代に旧訳のさらに旧訳で読んで挫折したという苦い経験をもっている。だがこの新訳だったら、当時でも通読できたかもしれない。約100年前に書かれた書物ではあるが、今でも新鮮さを失わない。

資本主義の社会を突き動かしている駆動因とは何か。それは勤勉な労働か、それとも欲望の肥大化か。いやいや、カネ儲けとは一切関係のない信仰心こそ資本主義の源流、というのがウェーバーの見解だ。

営利追求を敵視したプロテスタントたちは、逆説的にも資本主義を動かした。この論理は色々な意味で示唆的だ。経済を動かすエネルギーは、利益動機とは別のところにある。努力が報われるように給料を与えても、それだけでは経済全体はうまく発展しない。現代人に問われているのは、資本主義の新たな精神ではないか。私たちは経済の新たな駆動因を必要としている。

Max Weber
1864~1920年。ドイツの社会科学者。著書に本書や『儒教と道教』『古代ユダヤ教』を中核とする比較宗教社会学と、『支配の社会学』『社会学の基礎概念』『法社会学』など。

日経BP社 2520円 294ページ

  

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