東芝が「臨時株主総会」を相次ぎ要求される訳 株主総会決議を問題視する「モノ言う株主」

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ファラロン・キャピタルは、東芝の現在の取締役は中計を実行することを公約して選任されたにもかかわらず、株主の意思を問うことなく計画を大きく変更することは、前提条件が変わり株主の信頼を裏切るものに他ならないと主張。合理的な説明を含む資本政策案の策定を求めて臨時株主総会の招集を求めている。

1週間で2回にわたって臨時株主総会の招集が請求された背景には、東芝の経営陣、中でも車谷社長に対する不信感がある。

「過去にさまざまな不祥事を起こしておきながら、それを隠蔽するという体質は何ら変わっていない。しかも車谷社長は自身の選任が最優先。選任が危ぶまれると自分にとってマイナスなことや不祥事などを隠し、選任された後に公表するということを繰り返してきた。これはガバナンス上、大きな問題だ」と、別の投資ファンドの幹部は憤る。

大株主の外資系ファンドに募る不満

事実、東芝は、ウエスティングハウスによる不正会計問題の際にも当初「問題はない」としていたにもかかわらず1年後に巨額損失を計上、子会社で架空・循環取引が発覚した。

【2020年12月29日14時28分追記】架空・循環取引に関する初出時の記述を一部修正いたします。

「何ら問題がないのなら第三者委員会などの場できちんと説明すればいいのに、それを拒むのは疑わしいことがあるのだと思わざるをえない。今回の株主総会でも、そうしたガバナンスに問題があるとして株主から交代を求められてギリギリの票数まで詰め寄られたのに、それに対する反省がまったくないのではないか」(外資系ファンド幹部)

東芝は不正会計などで経営危機に陥り、その過程で複数の外資系ファンドを割当先とする約6000億円の増資を実行した。その結果、経営破綻は避けられたが、外資系ファンドの持ち株比率は現在も6割超で、前述した2社以外にも不満を持つ外資系ファンドは少なくない。

そうしたファンドが今後、同様の行動に出る可能性もあり、東芝の経営をめぐる神経戦はしばらく続きそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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