不動産屋の「トラブル」が長年絶えない根本原因 契約や勧誘など苦情や紛争相談が相次いでいる

拡大
縮小

一方で、国土交通省の「不動産トラブル事例データベース」を調べると、ある不動産屋が自らの宅建免許の名義を、免許を持っていない不動産屋に貸す、いわゆる「名義貸し」の事例が目立つ。

私が見たケースでは、法律違反と知りながら何度も繰り返したために悪質であるとされ、1年間の業務停止処分になっていた。

身近な例として、ポスティングが挙げられる。集合住宅のエントランスに「ポスティング禁止」と書いてあろうと、侵入して不動産のチラシを投函する。これは立派な不法侵入だ。

コンプライアンスの意識の低さ

『不動産屋にだまされるな――「家あまり」時代の売買戦略』(中公新書ラクレ)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ときには管理人がいないタイミングを狙ったり、管理人が帰った後を狙って投函したりと、こちらも悪質極まりない。

それ以外にも少し街を歩けば、「貼り紙禁止」とされた電柱や、交通標識に貼られた不動産広告、公道へ設置した物件看板など、頻繁に目にすることだろう。

これらはまだかわいいものなのかもしれない。しかし、コンプライアンスへの意識の薄さが見える彼らから「お金や権利がかかわる部分は別です」と言われても、信じるほうが無理な話。消費者との間でトラブルが絶えないのも、当然ではなかろうか。

山田 寛英 公認会計士・税理士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ ひろひで / Hirohide Yamada

1982年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。アーク監査法人(現・明治アーク監査法人)に入所。不動産会社や証券会社を中心とした会計監査実務を経て、税理士法人・東京シティ税理士事務所にて個人向け相続対策・申告実務に従事。2015年、相続税・不動産に特化したパイロット会計事務所を設立。不動産を中心とした相続対策・事業承継を専門とする。各種メディアへの寄稿や講演も。著書に『不動産屋にだまされるな』『不動産投資にだまされるな』(いずれも中公新書ラクレ)など。Youtube「会計士・山田寛英の不動産税金チャンネル」運営。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT