不動産屋の「トラブル」が長年絶えない根本原因 契約や勧誘など苦情や紛争相談が相次いでいる
端的に言えば、トラブルの原因は、不動産屋というプロと、消費者というアマが持つ情報量の差にある。不動産屋は伝えたつもりでも、消費者側が理解していなかったり、不動産屋が意図的に情報を伝えなかったりしたことが、のちに露呈して、トラブルにつながるケースが多いと思われる。
しかもそれでいて、解決を消費者に課している姿勢が、さらに問題を複雑にしている。例えば不動産適正取引推進機構が出している「不動産売買の手引」には、冒頭の「はじめに」で、以下の文言が書かれている。
一般の方が、不動産の売買をすることは一生に何度もあることではありません。不動産の購入についての知識や経験も少ないのが普通です。
そこで、つい業者任せになってしまい、後になってから「こんなはずではなかった」、「悪質業者にだまされた」といったトラブル相談が多く寄せられています。
「再発防止策」を進めるのは業者側の責務
もちろん、情報量の差によるトラブルは、不動産業界に限った話ではない。金融業界、医薬業界、飲食業界、家電業界、あらゆる業界で毎日のように起きている。
しかし事故が発生した場合、どのような事情だろうと、再発防止策を進めるのは、業者側の責務だ。購入者や消費者側を「より賢くなるべき」という方向に誘導するのは多くの場合、誤りである。
とくに、一生に一度あるかどうかの取引のために、非常に複雑な不動産の知識を「増やせ」と業者側が主張するのは無茶が過ぎる。それなのに「消費者の責任」という立場を崩さない姿勢に問題の根源が見え隠れしているよう、私は感じる。
また法律順守、いわゆるコンプライアンスに対する意識の薄さが不動産業界全般にあることも否めない。一般の人なら「違法行為はやってはいけないこと」と認識する。しかし一部の不動産屋には「違法行為でも取り締まられないことならやってもいい」という考え方が強く残っている印象がある。
ここで他の業界、たとえば自動車業界に目を向ければ、この数年で自動車にドライブレコーダーを設置するのが当たり前になったことで、事故の加害者・被害者の特定や、あおり運転の被害などを証明しやすくなった。
映像という「証拠」が残ることで状況が大きく変化したのだ。しかしこの変化も、法律改正によって起こったというより、技術が向上したり、機器が安くなったことで生まれたと言える。法律はむしろ後追いである。
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