新婚で「義母と同居」した女性が心底幸福なワケ 「真の豊かさ」のひとつの形がそこにある

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失敗経験を重ねてきた一郎さん。だからこそ、初対面の真奈美さんが発した好感触を逃すことはなかった。

「かわいいな、と思っていたら、僕の話をよく聞いてくれるので『いけるかも』と思ったんです。今日はこの人の連絡先を聞いて帰ろうと決めました」

真奈美さんの父親が急病を患うという不測の事態にも…

一郎さんの動きは止まらない。初回のデートで「付き合ってください」と告白し、数カ月後にはプロポーズ。今年、結婚式を挙げるつもりだったが、1人っ子である真奈美さんの父親が急に認知症を患うという不測の事態が起きた。

「もともと糖尿病で、インスリン注射と透析が欠かせません。認知症で自宅介護となると母の負担が重すぎるので、私がしばらく実家にいました。一郎さんとの結婚が破談になっても仕方ないな、と思っていたのですが、父を施設に入れるときに毎週のように車を出して荷物を運んでくれたんです。すごくよくしてくれる旦那さんだね、と母は大喜びしています」

感動を思い出したように声を震わせながら話す真奈美さん。一郎さんのほうは不思議そうな顔をしている。10年前に父親が終末医療を受けていたときも当然のこととして毎週ホスピスに通っていたという。

父親が亡くなり、弟と妹はそれぞれ結婚して独立した。母親は長男に寄りかかるようなそぶりは見せないが、広い家での1人暮らしを望んではいないことを優しい一郎さんは知っている。

「結婚してどこに住むかは悩みました。都内は駐車場が高いので、実家の車庫にある車をどうするのか、長く飼っているインコは大丈夫なのか、などです」

一郎さんにしか懐かないインコだが、寂しがりなので昼間に誰かの気配がないと弱ってしまうらしい。母親が「バカインコ」と呼びながらも家にいてくれるので、一郎さんは仕事やドライブに心置きなく出かけられるのだ。

住む場所問題は真奈美さんが同居を快諾することで解決した。冒頭で書いたように、真奈美さんは都会の一軒家に住めることをむしろ感謝しているのだ。

次ページしきりに感謝の言葉を口にする真奈美さん
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