明石家さんま、高校で突然人気者になったワケ 素人なのに「好きな芸能人」にもランクイン
すると、当たりどころが悪かったせいか、康雄の頭に竹の棒が直撃した瞬間、「ボコン!」と、おかしな音が鳴った。真横に座っていた高文は笑いをこらえきれず、とっさに両手で顔を隠し、うつむいた。乾井は、体を小刻みに震わせる高文を見て、地面に置いていた拡声器をつかみ、様子を見守る生徒たちに向けてこう言い放った。
「いつも悪ふざけをしとる杉本が、泣いて反省しとる。みんな、許したってくれるか! 皆が力を合わせて一生懸命準備してきた運動会を、悪ふざけで台無しにしたこいつらを許したってくれるか!」
熱のこもった乾井が勢いそのままに続ける。
「杉本! お前からも一言みんなに謝れ!」
泣いていると思われるのを嫌がった高文は、顔をふさいでいた両手を広げ、おどけたポーズを見せた。その瞬間、高文を注視していた生徒たちが怒濤のごとく笑いだした。
再び乾井に捕まったさんま
呆然と生徒たちの方を見る乾井。高文はその隙を突き、逃げ出した。「杉本~!」と乾井の大声で拡声器がハウり、「ピーーー!」と耳障りな音を立てた。
乾井は鬼のように怒り狂い、高文を追いかけた。しかし、運動靴を履いた高文はそう簡単には捕まらなかった。グラウンドの中央で正座をさせられていた仲間たちは腹を抱えて笑っている。来賓席に座る大人たちの表情もほころんでいた。
乾井はなんとか先回りして捕まえようとするが、高文は巧みなフェイントで何度も乾井をかわした。そのたびに生徒たちの笑いが波打った。
高文は満足したのか、走る速度をゆるめ、再び乾井に捕まった。
「いたたたたっ、ちょっ、先生、かんにんしてぇなぁ」
「このバカタレがぁ!」
乾井が高文を捕らえたこの決定的瞬間は、新聞部の生徒によってカメラに収められた。高文と乾井の最終決戦は、その写真と共に学校新聞に大きく掲載され、奈良商に語り継がれる伝説となった。
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