ホンダが「自動運転レベル3」世界初となる訳 なぜ日本が世界に先駆けて実現できたのか
こうしたさまざまな制約を課す中での型式指定となったわけだが、現状では制約が多過ぎる印象は否めない。
この内容を真に受けると、この複雑な条件下であってもレベル3が動作している間なら、ドライバーがスマートフォンを操作したりTVを視聴したりすることは認められる。
ただ、いつシステムから監視を委ねられるか(=運転責任が運転者に変わるか)はわからないから、この状態で走行中にパソコンを開いて仕事するなんてことは事実上、不可能。結局、ドライバーは常に前方を注視しておく必要があるわけだ。正直に言えば「これで自動運転と言われてもなぁ……」という思いにもなる。
それでも日本としてレベル3の型式認定を急いだのはなぜなのか。これまで日本の自動車メーカー各社は、数々の実証実験を通して技術面では実用化に自信を深めていたとされる。2017年にドイツのアウディが「A8」で渋滞時のレベル3を実現したと発表した際も、関係者は特に驚くことはなかったようだ。
結局、アウディのシステムは世界中のどの地域でも認可されることはなく、今もレベル2の状態のままで販売されている。この背景にあったのが法整備の壁だ。
先行したアウディが実現できなかった理由
各国が法整備をするに当たって批准している条約として、主に日本やアメリカが批准する「ジュネーブ道路交通条約」と、ドイツも含め主に欧州が批准する「ウィーン道路交通条約」の2つがある。
これらの国際的な道路交通条約では、「自動車には運転者がいなければならないこと」および「運転者が適切に操縦しなければならないこと」を規定しており、自動運転を実現するためには、この改正が欠かせなかった。
そんな中、ウィーン道路交通条約は2016年に自動運転を認める改定を行い、これに合わせてドイツでも国内法を改正して自動運転を合法化した。これを受けてアウディはA8でレベル3の搭載に踏み切った。
これで世界初のレベル3が実現するかと思われたが、自動車の国際的な認証について話し合う国連欧州経済委員会(UNECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)では、2017年の時点で「時速10キロ未満」の場合を除き、グローバルで自動操舵を認めていなかった。
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