リニアは、世界でも通用するのか? 米東海岸で進む、知られざる巨大プロジェクト
ではなぜ米国でリニアなのか。ただでさえ、クルマ社会・航空機社会の米国にあって、リニアの出番はあるのか。
人口密集の米東海岸こそターゲット。総工費は1兆円とも
首都ワシントンDCからボルチモア、ニューヨーク、ボストンなどの都市が並ぶ米東海岸。そこは米国内で最も人口が密集しているエリアだ。その反面、「道路は渋滞しており、空港に行くにも1時間はかかる。空港のスロット(発着枠)もギリギリ」(JR東海幹部)。
東海岸では現在、米アムトラック社が運営する「北東回廊」が、ワシントン―ボストン間(約700km)を走っている。ただ、貨物列車も一般列車も混同して走行しており、日本の新幹線のような専用軌道でない。人口が密集、経済も成長し、輸送需要は拡大中だが、既存の交通機関では対応できていない――ここに、リニアのような高速鉄道の入る余地がある、とJR東海は見込んだ。
リニアの第一弾として挙げているのは、ワシントン―ボルチモア間(約60km)だ。東海度本線なら、東京―平塚(神奈川)間程度の距離である。今は鉄道で1時間がかかるが、時速500kmのリニアが走行すれば、わずか15分間で結ばれるという。この後、ワシントン―ニューヨーク(約360km)や、ワシントン―ボストン(約730km)までが、延伸の視野に入っている。
まだ構想段階ながら、第一弾の総工費は約1兆円と見込まれている。日本側の協力として、技術ではJR東海、資金では国際協力銀行(JBIC)が担当することが、ほぼ固まっている。JR東海はリニアに関する技術のライセンスを無償供与し、JBICは「資金の半分」(JBIC幹部)を融資するもようだ。ただし、JR東海自身は運営には参加せず、あくまで「リニアの普及を通し、量産効果によるコスト削減を狙う」(JR東海首脳)。それが日本でのリニアの投資回収にもつながるからだ。
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