国の第3次補正予算、注目すべき「6つの焦点」 国債発行額は過去最高、困窮者に絞った支援を

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1つは予備費の使途を確定させて投じる追加の歳出予算だ。いきなり国債を増発して歳出を追加する前に、予備費の残額がある。予備費の使途を確定させる形で、歳出予算の追加を計上する。補正予算上は、予備費を減額補正して、国債の増発を伴わない形で追加の歳出予算を計上する形となる。

巨額の予備費は、財政民主主義の観点から問題視されていた。第3次補正予算でも予備費の多くをそのまま残すと、予算統制の観点から国会で問題視されかねない。したがって、1兆円を下回る程度にまで予備費を減額補正し、その批判を回避する可能性が高い。

2020年度の予算として執行期間が残り3カ月ほどしかないのに、1兆円を上回る予備費を計上したままにすると、その意図に疑義が出る。今冬の新型コロナに備えた医療提供体制のための支出は、9月に予備費の使用を決定することですでに対処している。

企業向け給付は「コロナ後」用に衣替えを

2つ目の焦点は、追加経済対策に含まれる新たな歳出予算である。景気が悪いのだから第3次補正予算で歳出を純増せよ、という政治的圧力が極めて強いことだ。では、追加経済対策で新たにどんな内容を盛り込むのか。

例えば、家計向けの給付。12兆8803億円を費やして1人10万円を支給した特別定額給付金は、全都道府県で緊急事態宣言が出されたことの見合いで全国民に一律に給付された。再び一律で支給するなら、同じ事態になっていないといけないことになる。

ところが、政府も野党も、緊急事態宣言を再発出にはかなり躊躇している。国民生活や経済活動を強く制約する緊急事態宣言は不評であり、緊急事態宣言を出さないなら、一律給付の根拠も薄弱となる。給付するにしても、低所得者向けに限定されることになろう。

他方、企業向けには、4兆2576億円を計上した持続化給付金や2兆0242億円を計上した家賃支援給付金がある。ところが、持続化給付金では再委託問題が批判され、担当部局は持続化給付金の単純延長に尻込みしている。家賃支援給付金も利用が低調で、予算のうち3140億円を持続化給付金の財源に流用するという。

そうであるなら、企業向け給付は、これまでの対策を継続するより、ポストコロナを見据え、業務の転換やデジタル化を促すなど、目的を絞った補助金に転換することが考えられる。

他方、雇用調整助成金の特例措置再延長は労使とも要望が強く、第3次補正予算における扱いに注目が集まる。雇用調整助成金関連の特例措置は、現在のところ2020年末までとなっている。期限を再延長するなら、2021年1月以降の支給分の追加財源が必要となる。雇用調整助成金は、労働者と事業主が負担する保険料を労働保険特別会計で経理されているが、一般会計からも国庫補助を出して給付している。期限を再延長するなら一般会計からの国庫負担を増額しなければならない。

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