コロナによる「医師の離職」大量発生の実態 医療崩壊は、すでに身近で起きている

拡大
縮小

個人防護具のコストが経営上、相当な負担になっているクリニックもある。医師たちも、感染防止策を絶え間なく続けなければならないことから、かなりのストレスにさらされている。

「今は耐え忍ぶしかない、という感覚が広がっている」と話すベイリー医師は、パンデミックの中で治療にあたる慢性的なストレスからPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する医師が出てくるのではないかと心配している。

コロナ禍で進む、あなたの街の医療崩壊

医療現場を去る動きは開業医以外にも広がっている。カリフォルニア州ソレダッドにある地方のクリニックでナース・プラクティショナー(NP=一定の医療行為を行う登録看護師)として働くコートニー・バリー(40)さんは、近隣のコロナ感染が一服するや、今度は山火事への対応を迫られた。患者の多くは屋外で働く農家。山火事による煙で治療が必要になっていた。

NPとして働いてきた14年間で「これほどハイレベルなストレスが延々と続く状況」に直面したのは初めてだという。「終わりが見えないぶん、余計につらい」。勤務日数を減らすことも試みた。が、最終的に12月上旬から数カ月間、完全に仕事から離れることにした。その後、どうするかはまだ決めていない。

「医療には従事し続けるつもりでいるが、まったく違う分野に進むことも視野には入れている。以前の自分だったら、考えられなかったことだけど」とバリーさん。

その影響は患者にも確実に及びつつある。コロラド州コロラドスプリングスで開業医をしているリプリー・ホリスター医師によれば、コロナ禍は「大規模な(医療)崩壊」に発展した。クリニックの閉鎖で「患者の医療アクセスに大きな支障が出る」可能性が高まった、というのである。

ホリスター医師の診療エリアでは専門医や日常的な医療を担うプライマリー・ケアの医師が医療現場を去った結果、ホリスター医師がかかりつけ医のいなくなった患者の面倒をみるケースが増えている。

(執筆:Reed Abelson記者)
(C)2020 The New York Times News Services

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT