競合車種なきオデッセイが描く国産ミニバン像 初代から貫く家族や仲間と楽しむミニバンの姿

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イグニッションを入れたとき、搭載するリチウムイオンバッテリーに十分な電力が残されている間はモーターのみで電気自動車(EV)のように走る。バッテリー電力が減るとハイブリッド走行になるが、このときガソリンエンジンは発電に使われるだけで、走行はモーターで行う。高い速度で安定して移動するような場合は、ガソリンエンジンの回転数が低めで効率のよいところを使うため、ここではエンジンを動力として走らせる。

上級セダンとして上質な居住空間と広い荷室スペースを確保したプラグインハイブリッド車「クラリティPHEV」(写真:ホンダ)

このホンダの2モーター方式は、プラグインハイブリッド車にも適応でき、たとえばクラリティPHEVがその一例だ。

低重心で差別化を図ったオデッセイ

1994年に初代オデッセイが誕生したときから3列目の座席は、床下へ折りたためる方式を採用している。これは他社のミニバンが採り入れなかった収納方法である。ミニバンといえども日常的に3列目はあまり利用されないことが多く、床下に収納することでワゴン車のように大きな荷室が得られる。また、操縦安定性の面でも低重心に役立つ。オデッセイの魅力は、背の高いミニバンでありながら壮快な運転を楽しめるところにもある。

今回のマイナーチェンジで、オデッセイ本来の魅力である実用性の高さや運転のしやすさなどはそのままに、時代に適した改良を受けたといえそうだ。

一方、世間では競合として比較されることも多いアルファード/ヴェルファイアは、前型から2列目の座席の居住性をより高め、運転手付きのセダンやリムジンからの乗り換えで人気を高めた傾向があるのではないか。もちろん、ミニバンである以上3列シートではあるが、2列目の上質な空間や座席の調整機能と、ハイブリッドを活かした静粛な乗り味は、ほかに代えがたいものがある。

実際、アメリカなどで永年にわたり送迎用などに活躍したストレッチリムジンは、今となっては天井が低くかなり狭い印象がある。政治家や企業人がミニバンを送迎用に好むのも、アルファード/ヴェルファイアが魅力を掘り起こしたといえるだろう。

家族や仲間と楽しむクルマという独自性

オデッセイは、今回のマイナーチェンジにおいてもあくまで家族や仲間のためのミニバンという姿を崩していない。3列目の座り心地は初代から悪くはなく、これに近年の運転支援機能を活用すれば、車酔いも起こしにくくなるはずだ。なぜなら車線維持機能や車間距離を自動調整しながら一定速度での走行を促す機能は、余計なハンドル操作や速度の加減速を減らし、滑らかな走行を実現するからである。

3列目は、後輪の上に座る位置関係となるため、上下動や姿勢変化の影響を受けやすく、その結果車酔いにつながってしまいがちだ。それが運転支援機能の利用で穏やかな走りとなれば、不快さや不安から解放される。

競合が去った今、日本にミニバンを流行させた初代から続くオデッセイ独創の魅力をより多くの消費者が体感することになるのではないか。

ボディカラーは5色。助手席リフトアップ/サイドリフトアップの福祉車両も設定(写真:ホンダ)
御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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