国道16号線が「翔んで埼玉」の世界観にハマる訳 私たちを思い込ませた「容疑者」は一体誰だ

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このギャグマンガが大ヒットし映画化もされた

ショッピングモールとラーメンチェーンとコンビニと倉庫が並んでいて、周囲に田んぼや畑が結構あって、時々トラクターが近所を走っている。週末の夜には暴走族がかつてたむろしていた。電飾眩しいデコトラを見かけるときもある。およそ都会ではない。かといって風光明媚な自然があるわけでもない。そんな、ビミョーな場所……。

東京の郊外を走る全長330キロ、国道16号線のパブリックイメージである。米軍と港町のイメージが強い横浜、横須賀近辺は除いておく。

16号線エリアの町にまといつくイメージ

そして、16号線エリアの町にまといつくこんなイメージを、そのままモチーフに使った映画が2019年春公開された。『翔んで埼玉』である。

──その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていない者は見つかると強制送還されるため、埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。(映画パンフレット『翔んで埼玉』より)

こんな前振りで始まる『翔んで埼玉』には、2人の主人公が登場する。東京の超名門校白鵬堂学院を牛耳る都知事の息子にして生徒会長の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)と、アメリカから転校してきた眉目秀麗な麻実麗(GACKT)だ。

麻実は東京丸の内の大手証券会社の御曹司だが、その正体は埼玉県の大地主西園寺家の息子。将来都知事となって通行手形制度を撤廃し、埼玉県民が自由に東京に出入りできる未来をつくるのが、彼の秘めたる野望だ。

白鵬堂学院では、赤坂、青山など「都会指数」の高いところに住む生徒がA組、B組からD組には中央区、新宿区、横浜などの生徒とクラス分けされている。E組には東京でも都会指数はゼロの田無や八王子から通う生徒が押し込められる。最底辺のZ組の生徒は元埼玉県民である。校舎に入れてもらえず、外の掘っ立て小屋で勉強をする。

壇ノ浦は、自分を凌ぐ文武両道の麻実に恋してしまい、麻実の埼玉解放運動に加担することになる。立ちはだかるのは、都知事である父、そして、壇ノ浦家に仕える執事にして埼玉県のライバル千葉県出身者の阿久津翔(伊勢谷友介)であった……。

以上が『翔んで埼玉』のあらましだが、この映画でギャグとなっている「埼玉らしさ」は、冒頭にあげたパブリックイメージとしての「16号線らしさ」とぴったり重なる。

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