高齢者は経済の宝、社会保障で地方創生は可能 「潅漑施設としての社会保障」という考え方

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図5には社会保障を通じて、年齢階級別に、どのように所得が再分配されているのかを描いている。所得分配のあり方が貢献原則から必要原則に修正される過程で、労働市場への参加を徐々に減らしていく高齢者の所得を、年金、医療、介護などにより底上げしている姿がわかる。

こうした所得再分配は、どの地域からどこにという地域間での所得移転として眺めることもできる。これまでの話で想像できるように、当然のことながら、所得の高い地域から低い地域へと再分配が行われることになる。図6は、地域ブロック別所得再分配状況を描いたものであり、再分配係数とは、(再分配所得-当初所得)/当初所得×100の数値である。

表1は、社会保障給付の中でも年金だけを取り上げて、県民所得と家計最終消費支出に対する比率を示したものである。島根県や鳥取県などは、公的年金の対家計最終消費支出比が2割を超えている。これらの県は高齢化水準も高いので、この上に、医療介護の支出が上乗せされることになる。

地方創生と社会保障

さて、こうした所得の再分配を行っている社会保障の観点から見ると、ある地方に、高齢者がひとりいるということは、その地域に高所得地域から所得を移転してくれる経済主体がひとりいるということになる。しかも、高齢者ひとりは、医療、介護のサービス需要も持っているのであるから、高齢者がいれば、医療介護方面での労働需要も大いに生まれる。さらには、医療介護は、公定価格であるため(介護には若干の地域差はあるが)、地方での実質価値は高くなる。

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