高齢者は経済の宝、社会保障で地方創生は可能 「潅漑施設としての社会保障」という考え方

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図4では、所得階層別に、所得がどのように移転しているのかを描いている。中・高所得者にも、給付が行われているわけだが、この点、次の注意点は極めて重要である。

高所得層への再分配を切ったらどうなる?

社会保障の中の社会保険による所得再分配は、……中の上の所得層、高所得者だからといって給付がなくならないところがミソでもあるわけです。社会保障のそういう側面を、「はじめに」で紹介したシカゴ学派系、公共選択系の経済学者たちは嫌います。彼らは、政府の介入は低所得者の救済に限るのが理想と考え、それを効率的な再分配政策と考えているからです。
しかし彼らシカゴ学派系、公共選択系の経済学者が望む社会保障にすると、中の上の所得層、高所得層は、社会保障は人のためのものであり、自分たちは負担を強いられるだけという捉え方をするようになるでしょう。そうした制度がどういう運命を辿るかは、考えてみる価値があると思います。
もっとも彼らの中には、市場領域を最大化する狙いはあっても、社会を分断することには無頓着(もしかして意図的?)であったりするわけですけどね。また、そうした彼らの狙いに気付かずに、日本で彼らと同じような再分配のあり方を提案している経済学者がいたりもします。
『ちょっと気になる社会保障 V3』102ページ

このあたり、社会保障の理解にとってとても大切な側面なのだが、世の中には、けっこう理解されていない。次のような文章があることも紹介しておこう。

社会保障における能力に応じた負担という考え方は、財源調達面に限るのであり、生活リスクに直面してニーズが顕在化し給付を受ける段階で、自己負担率に差を設けることは、社会保険の理念にそぐわない。ゆえに、低所得者対策を除いて、所得に応じて自己負担に差を設けている現行制度も見直すべきである。このことは、公的年金の繰下げを進める政府の方針とも整合性を持つ。
日本医師会・平成30年・令和元年度医療政策会議報告書『人口減少社会での社会保障のあるべき姿』5ページ
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