公的年金保険の根本原則を知っていますか 「消費の平準化」を理解すればスッキリする

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なお、日本の公的年金保険は賦課方式である。しかし、他国と比べて変動の大きい人口構成に対応するバッファーとして、おおよそ4年分の給付を賄うことができる積立金を持っている。このバッファーとしての積立金があるために、ふたつの大きな人口のコブ──第1次ベビーブームと第2次ベビーブーム──を抱える日本の公的年金が、賦課方式のもとでも保険料を上下しなくて済むように制度を設計することができている。

また、さまざまな社会・経済的なショックに対しても、積立金は給付を賄うためにいったん立て替えたりと、バッファーとしての役割をはたすことになる。そして、日本の公的年金保険が、およそ100年後には年金給付の1年分の規模になるまで今ある積立金を計画的に使っていくこととされている。

これに比べて、フランスは積立金をほとんど持っておらず、ドイツは年金給付の2カ月分くらい、イギリスは4カ月程度、アメリカで約3年という状況である。

ちなみに、およそ100年先までの公的年金保険の給付総額に積立金が貢献する割合は、平均すると1割程度にすぎない。

公共政策として、将来の年金給付水準を上げるのに最も有効な策は、保険料収入の増大をもたらす賃金の引き上げや、それにつながる人的資本の充実だと言われるゆえんである。そのうえ公的年金積立金の運用は超長期であるため、3カ月、半年などの短期間の運用結果に世の中が一喜一憂している様子は、かなりバカバカしく見えたりもする。

根本原則とライフプラン

1人ひとりにとっても、高齢期の生活を安定させるために重要なことは、多くの保険料を拠出しておくこと、すなわちより高い賃金を得、長く働いておくことである。多くの人が強い関心を持つ、制度の隙間を利用して抜け駆けをする余地などない。それが公平な年金制度というものであり、働いて賃金を得るという、この王道を行くしかない。

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