「地頭力を鍛える」ためのフェルミ推定の活用法 例題:日本全国の道路の合計距離は何㎞か?

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その本質が、「結論から考える」仮説思考力、「全体から考える」フレームワーク思考力、「単純に考える」抽象化思考力の3つであり、そのベースとなるのが「万人に理解される」ための論理思考力、経験と訓練で鍛えられる直観力であり、さらにそれら全体のベースとなっているのが「知的好奇心」です。

これが、私が考える地頭力の全体像です。

DXやVUCAの時代に求められる「フェルミ推定」

それでは、実際に「地頭力」を鍛えるにはどうすればいいのか。

その訓練のツールとなるのが「フェルミ推定」です。

「日本全国に自動販売機は何台あるか?」「世界中で1日に食べられるピザは何枚か?」といった、把握することが難しい膨大な数量について、何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法をフェルミ推定といいます。

「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者エンリコ・フェルミ自身がこうした物理量の推定に長けていたと同時に、教鞭をとったシカゴ大学の講義で学生にこのような課題を与えていたことからキョウフェルミ推定と呼ばれます。

「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」という質問が、フェルミ推定の「古典」として有名です。

フェルミ推定のような思考が求められるのは、仕事の「川上」つまり、事業や商品・サービスの概要やコンセプトを考えるような状況で、何らかの意思決定をするような場面においてです。

フェルミ推定的な考え方は、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれるICT化の進展やVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)に伴う商品・サービスやビジネスモデルの抜本的かつ迅速な変化の中で、重要性が高まってきています。そこでは、完璧主義よりも、仮説検証を繰り返す「プロトタイプ型」の仕事のやり方が有効である場面が多いのです。

さらに、IoTという「すべてのものがネットにつながる」世界がもたらしている変化があります。そこでは、これまで荒唐無稽な質問だった「世界に信号機はいくつあるか?」「世界にコンセントはいくつあるか?」といった問題が、現実的に「それらすべてにセンサーがついたら、どのようなビジネスにつながるのか?」といった問題になっていくからです。

従来、思考のトレーニングツールという意味合いの強かったフェルミ推定が、現実的にも役立つ場面が増えてきているのです。

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