一方、トランプは、前回の選挙と同じく、白人票では勝利し(57%)、差は小さくなるが65歳以上の層でも民主党候補を上回った。これらの出口調査結果では、トランプはアメリカの労働者階級の票を獲得したという見方は当てはまらない。大学の学位を持たない人は両候補者間で半々に分かれ、バイデンは労働組合世帯の票の57%を獲得している。トランプは富裕層で実際によい結果を出し、所得10万ドル以上の層の過半数の支持を得ただけだ。
出口調査は、選挙結果についてより根本的な問題を明らかにしている。経済が最重要課題と考え、現在の暮らし向きはよいと感じている人と、新型コロナウイルスの感染拡大を最も懸念する人との分断だ。
トランプはその分断を深めるように選挙運動を行った。新型コロナウイルス感染症に対する懸念を軽視し、経済的繁栄を取り戻すことを約束した。トランプにとってはそのメッセージが、新型コロナウイルスへの対処を誤ったことや紛れもない人種間不平等の問題を部分的に克服するのに役立ったのは明らかだ。
これらの問題に隠れてはいるが、出口調査ではアメリカ国民のかなりの部分がトランプの権威主義的な人格を賞賛し、崇めてさえいる事実が明らかになった。有権者の3分の1のうち、約71%が、選択を行うに当たっては候補者が「より強い指導者」であることが最も重要だったと回答している。
暴動の危険性は残っている
こうした中、選挙前から始まっていた選挙結果を覆そうとするトランプのくわだてがすでに進んでいる。ミシガン州での訴訟およびウィスコンシン州での再集計を要求する訴訟とともに、ペンシルベニア州での郵送による投票数に異議を唱える訴訟が進行中だ。
アリゾナ州とネバダ州では集計が続いているため、さらなる訴訟が続く可能性がある。トランプ派によって組織された抗議活動がすでに勃発しており、暴動の危険性が高まっている。
「トランプによる選挙への抗議は南下し、国内で暴動が起こる可能性がある」と、アメリカ情報機関の高官は案じる。「さらに大きな懸念として、秋の終わり頃から冬にかけて、新型コロナウイルスが猛威を振るう可能性が高く、医療と経済に悲惨な結果をもたらすかもしれないということがある」。そうした状況下では、「現時点での憲法上の危機を回避することは、短期的なものに過ぎないかもしれない」。
仮にバイデンが勝利し、新政権へ移行する場合、政権移行期間中の危険はこの他にもある、と上級情報機関のある関係者は警告する。同氏が懸念するのは、移行期間中にトランプが国家安全保障上の決定を下すことによって、バイデン新政権が非常に困難な立場に置かれる可能性だ。
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