「トランプ敗北」で起こりかねない深刻な危機 バイデン政権になる前の移行期間が危ない

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例えば、トランプがCIAと国防総省の大規模な人事粛清をただちに行う可能性は非常に高い上、目下アメリカの感染対策を指揮する、国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長のような専門家を解雇する可能性がある、とこの関係者は予想している。

イランに「置き土産」をする可能性は

一方、世界的には、中国やイランなどはバイデン政権下で混沌とした状況が改善することを期待して慎重になる可能性があるが、新たに行動を起こす国が出てくるかもしれない。

トランプの支援に多額を投じてきたイスラエルのビビ・ネタニヤフ首相が、「パニックに陥ってトランプに、イランに対して決定的な(歴史的な!)行動を取るよう説得するために全力を尽く可能性がある」と、諜報機関のある高官は話す。

「イランの軍事施設、あるいはイランの機密インフラに対する大規模な空襲だ。イランの対応には、バイデン政権初期におけるテロと秘密戦争が含まれる可能性がある」

東アジアでは、台湾海峡での緊張が同様の危険をもたらす。南シナ海や北朝鮮の状況もしかりだ。トランプ氏が辞任する前に発砲を行う可能性がぬぐいきれない。ここ数カ月、大統領は諜報機関や国家安全保障を担当する高官と接触していない。特に選挙の敗北を阻止するトランプの試みが失敗した場合、無謀なことをしかねない、と懸念する声は少なくない。

アメリカの民主主義は新たな予測不能な段階に入った。唯一確かなことは、トランプ主義の蔓延を封鎖するという希望が新型コロナウイルスに対するアメリカの対応と同じくらいみじめに失敗したということだ。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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