創業より難しい2世のわな 後を継いではみたけれど…
「特別扱い」の御曹司
2世経営者は、だいたい二つのタイプに分類できるという。
「一つは親を超えようと頑張る暴走型。もう一つは何もしない遺産食いつぶし型。結果的には、どちらも失敗します」
「暴走型」は、裸一貫で事業を広げた親に比べて学歴も高く、MBAなどの資格も取って最新の経営理論に通じており、
「おやじの古いやり方は見ちゃおれないと言い出して、現実に合わない改革を打ち出してしまう」(佐伯さん)
冒頭のAさんなど、まさにこのケースにあてはまるだろう。
親から子に「特別扱い」を与えるケースもある。ダイエーの創業者の中内功氏は、長男の潤氏を後継指名し、30代の若さで副社長につけ、米国仕込みの安売り店「ハイパーマート」など、重要な事業を任せた。しかし、うまくいかず、後のダイエー経営の重荷となった。
80年代後半のことだが、中内氏と親しかったベテランの大手新聞記者が、商学で博士号を持つ潤氏があまりに理論家肌でありすぎることを心配し、中内氏にこんなアドバイスした。
「潤さんを一度、ほかの会社に預けて修業させなさいよ」
これに対し、中内氏は、
「うーん、いい案だけど、難しいな」
と首をふって黙ってしまった。その場にいたダイエーの元関係者は言う。
「中内さんは潤さんを溺愛していた。手元におきたかったのだろう。ただ、もし外でいろいろ経験を積んでいたら、潤さんの経営のかじ取りはもっと柔軟に変わっていたかもしれない」
一方、「食いつぶし型」では、佐伯さんが体験した中に、こんなケースがあった。
豪遊したくて後継いだ
神戸製鋼所の取引先の会社で2代目の経営がうまくいかないからと、要望に応じて応援チームを送った。上がってきた報告を見て、目を疑った。その経営者には数人の付き合っている女性がいて、ヨットも数隻を保有。ゴルフの会員権をいくつも所有していた。その経営者を呼び出して、「こんなことをしていたら、いつか会社をつぶしますよ」とアドバイスした。
その2代目からは、反論ともつかない言葉が返ってきた。
「こういうことをしたいから経営を引き受けたのに」