ホンダ「NSX」30年の歩みに見えたこの先の課題 技術を磨きブランド育て文化を創っていけるか

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言い方を変えれば、昔のままの運転ではうま味が味わいにくいとも言える。それもまた旧来のファンからそっぽを向かれた理由だろう。

それも含めて現行NSXは私にとっては走らせて楽しい、奥深いスポーツカーであり、可能なら手に入れたいと想像してしまうのだが、残念ながら販売は好調とは言い難い。それには、前述したようなメディアの酷評だけでなく、2000万円超のクルマだというのに普通のディーラーで軽自動車と並んで売られる販売方法なども大いに影響しているはずだ。これについては私自身、発売前からずっと指摘してきただけに「やっぱり言わんこっちゃない」と悔しい気持ちになってしまうのだが……。

ユーザーの顔を見てクルマを開発しているのか?

昨年、本田技術研究所の役員が3モーターハイブリッドの開発は中止すると言ったという報道にも落胆させられた。今それを搭載したクルマを売っているのに、そういうことを口にする意味がまったくもって理解できない。こういう不用意も甚だしい発言には、果たしてユーザーの顔を見てクルマを開発しているのか? と首を傾げてしまう。

NSXの将来はどうなるのだろう?

予測や予言は控えておくが、少なくとも初代がそうであったように現行NSXが、この時代の世界のスポーツカーをリードする存在として将来まで記憶されるモデルになることは断言できる。

たとえば2019年にフェラーリが発表したロードカーのSF90は、左右前輪を電気モーターで独立して駆動するプラグインハイブリッドカー。まさにNSXのコンセプトそのままと言っていい。マクラーレンも、やはり今後のロードカーはすべてハイブリッド化していくことを明らかにしている。この世界、今後は電動化を採り入れ、環境性能だけでなくパフォーマンスにどう活かしていくかが問われていくことになるのは間違いなく、その点で明らかに現行NSXは先を行っていたのだ。

本当なら、世に出しただけで終わりとするのではなく、それを進化させ続けることでEVにまで活用できる電気モーター制御技術を磨いていくというのが、こうしたモデルの役割であり可能性であり意義だろう。さらに言えば、それがブランドの一貫性を示すことになり、また文化を生み出すことにもつながるはずである。

やったりやめたりのホンダのF1を見ていると疑問符が浮かぶのは否めないが、初代NSXの歴史をいったん途絶えさせた経験から、ホンダがそれを理解していないはずはないとも思いたい。30周年を迎えたNSX。ここから歴史をどう繋げていくつもりなのかを、ホンダファンは、いや世界は注視している。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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