ホンダ「NSX」30年の歩みに見えたこの先の課題 技術を磨きブランド育て文化を創っていけるか

拡大
縮小
あのフェラーリやポルシェが後を追いかけた(写真:ホンダNSX30周年記念特設サイト)

ポルシェは1989年デビューのポルシェ911からティプトロニックと呼ばれるATやABSなどを採用していくが、フェラーリが2ペダルのF1マチック、ABSなどを設定するF355を投入するのは1993年のことである。

バブル崩壊もあり初代NSXの販売台数は決して多かったわけではない。結局、グローバルで1万8734台を販売し、2005年をもって生産、販売は終了された。

そのNSXの名が甦ったのは2012年。まずはコンセプトカーとして、発売を前提に開発が進められていることが明らかにされる。そして予定よりもやや遅れた2016年に、ようやく市販版の新型NSXが正式に発表される。今回の車名は「New Sports eXperience」の略である。

この現行NSXが、初代と同じなのはミッドシップレイアウトを採るスポーツカーということだけで、ハードウェアのコンセプトはまったく異なるものとなっていた。なんと言っても特徴的なのは、V型6気筒3.5Lツインターボエンジンと、リアに1基、フロントに2基の計3基の電気モーターを組み合わせたハイブリッド車だということだ。

その名もSPORT HYBRID SH-AWDは、左右前輪を独立した電気モーターで制御することで、異次元の旋回性能を実現すると謳う。実はリーマンショック前にホンダがNSX後継車として試作するもお蔵入りとなってしまったHSV-010は、V型10気筒エンジンをフロントに積み、SH-AWDを組み合わせたモデルだったから、新しいNSXがこうしたハイテクマシンになることは、十分予想できた。

初代に思い入れを持つファンの反発

しかし実際にそれがNSXとして世に出ると、初代に思い入れを持つファンは強く反発するようになる。ファンだけじゃない。多くのメディアもこぞって「これがNSXか?」という論旨の記事で煽り立てた。開発がアメリカホンダ主導だったことも、初代に思い入れた人たちには純潔に映らなかったのだろう。

実際はどうだったのか。パームスプリングスで行なわれた最初のメディア試乗会をはじめ、サーキットやワインディングロードなどでかなりの時間、距離をこの現行型NSXと過ごした私の実感からすると、そこにはまさに「新しいスポーツカードライビング体験」があると断言できる。

初期型は確かに荒削りな部分も多々あったが、一方でかつて経験したことのないようなコーナリングを堪能できるのも事実。但し、それには乗り手の側も新しいドライビング技術を心がける必要があるが、それは1980年代のF1マシンと今のそれの操縦方法が異なるように、時代の進化にいかに合わせていくかというだけの話である。

次ページ昔のままの運転ではうま味が味わいにくい
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT