ホンダ「NSX」30年の歩みに見えたこの先の課題 技術を磨きブランド育て文化を創っていけるか

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30周年という節目を迎えたホンダ「NSX」(右が2台目、左が初代、写真:ホンダNSX30周年記念特設サイト)

「New Sportscar X」の頭文字を取った車名を与えられて、ホンダNSXが発表されたのは1989年。翌1990年9月14日に正式に販売が開始された。つまり今年はNSXのデビュー30年という記念すべき年ということになる。

当時のホンダは、1965~69年の第1期に続く第2期のF1活動を行なっていた。1984年よりエンジンサプライヤーとして復帰し、早くも1986年にはウィリアムズ チームとのタッグで初の製造者タイトルを獲得する大活躍を演じ、最強エンジンの名をほしいままにする。

そしてこの年、1990年にはマクラーレンにV型10気筒3.5Lエンジンを供給しており、伝説のドライバー、アイルトン・セナのドライブで連戦連勝。結果的にセナが自身2度目のワールドチャンピオンに輝き、マクラーレン・ホンダとしても製造者選手権で3連覇という偉業を成し遂げていたのである。

フェラーリの328やポルシェ911カレラと伍す存在に

そんな風にF1で世界にその名を轟かせていたホンダが、そのイメージを投影した市販車で世界にアピールしたいと考えるのは自然なことだったろう。もともとは小型ミッドシップ車の研究から始まったというプロジェクトは、次第に革新技術を採用した高性能スポーツカーへと発展していく。そして、まさにF1で強力なライバルだったフェラーリの328や、ポルシェ911カレラといった世界に名を轟かせるモデルに肩を並べ、そして凌駕する高性能スポーツカーとしてNSXはデビューするのだ。

1972年生まれの筆者自身は、当時のことはさすがにメディアを通して見聞きするだけだったが、NSXについては800万円という車両価格で世間が驚き、しかもバブル経済真っ只中ということもあって投機目的の客が殺到。プレミア価格で取引されるようになったようなことが、新聞やテレビといったマスメディアでも盛んにとりあげられていたことはよく覚えている。

しかしNSXがもたらしたのは、そんなクルマ自身とは関係のないニュースばかりではない。今も語り継がれているように、そのデビューはのちのスポーツカーのあり方をリードするエポックメイキングなものとなった。扱いにくく敷居が高い、乗り手を選ぶのが当然だったそれまでのスポーツカーとは異なり、圧倒的な高性能を誰でも引き出すことができるというのがNSXのコンセプト。当時としては画期的なオールアルミモノコックボディを用い、室内は静かで快適で、ATが選択でき、ABSやエアバッグなどの安全デバイスも備わる。これは1990年代以降のスポーツカーでは当然のこととなっていく。

次ページ2005年にいったん販売終了、2016年に復活へ
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