では、UJがジーンズ市場に与えるインパクトを考えてみよう。ジーユーの990円ジーンズからUJのプレミアムラインである3,990円で、バリューラインの価格レンジはすべて押さえたことになる。「ユニクロとしての価格に見合った品質」に従った、「ユニクロとしてのバリューライン上のラインナップ」である。すると、何が起こるか。ほとんどの、いや、全てと言っていいかもしれない。競合となる他社ジーンズは、ユニクロの作ったバリューラインを下回る構図ができあがるのだ。
競合の価値が低いのではない。しかし、価格と価値の二軸で考えれば、金額の絶対値が高くなるためバリューラインの下にポジションされてしまうことになるのである。
今回のUJのインパクトは、スーパーバリューのポジションを取りに行くのではなく、自らのラインナップを「標準」として、競合を全てバリューラインの水面下に撃沈させるという戦略であるということだ。「どうしても特定のジーンズブランドが好き」とか、「ずっとご指名の型番をはいている」とかでなく、こだわりがなければUJ以外のジーンズを購入するのは不合理であることになる。
もちろん、人は経済合理性だけでモノを買うわけではない。筆者のご指名はエドウィン503ZZだ。しかし、もう一本となったら、UJで十分かな?と思ってしまう。昨今の消費者の購買行動はどんどん合理的になっているのだから。
ジーンズ市場はもはや勝負あった感が強い。ユニクロのジーンズは世界にどこまで広がっていくのだろうか。次に狙うのはどの市場か。そしてアパレル市場をユニクロが席巻していく先に、どんな風景が待っているのだろうか……。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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