「オタクは結婚できない」という大いなる誤解 興味・関心分野によって有配偶率に差がある

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既婚者の幸福度が高いのは、「家族や子どもがいるから」という要因があります。高い収入があるわけでも、何か他人より秀でた能力があるわけでもなく、むしろ自己有能感は低いにもかかわらず、既婚者は「あるがままの日常」の中に幸せを感じている人が多い。それは、家族や子どもを自分が支えている、応援しているという満足感によるものなのでしょう。

家族や子どものいない未婚のオタクも、アイドルやプロレスラー、好きなスポーツチームを応援することで満足を得ています。ある意味それは「擬似家族・擬似子育て」とも言えるのではないでしょうか。

親は、自分の子の大学授業料や生活費がどんなに高額でも、それを無駄な出費だとは思いません。アイドルオタクがアイドルのためならお金を消費するのも同様でしょう。むしろ惜しみなく注ぎ込みます。そこに何かの見返りを求めることもありません。

非オタクの未婚男性も幸福度は高い

お金をかけたからといって、そのアイドルが売れるとも限らないし、そのチームが優勝するわけではありません。しかし、そうしたいのです。経済的合理性や効率性などはどうでもいい話です。未来に確実な成功や報酬が約束されていなくてもいいのです。

むしろ、不確実な未来を一緒に喜びたいのです。理屈やリスクではなく思わず行動してしまうこと。それこそがオタクの幸せの正体なのかもしれません。

余談ですが、何1つオタク的趣味を持たない非オタクの未婚男性の中にも、とても幸福度の高い人たちがいます。それは、常に恋愛相手がいる3割の「恋愛強者」の男たちです。

世間的に彼らはオタクとは呼ばれませんが、見方を変えれば「恋愛オタク」と言えます。時間も手間も惜しまず、恋愛相手に対して喜んでもらいたいと行動しています。高級レストランをごちそうしたり、高価なプレゼントを買うこともまったく無駄だと思いません。

興味関心領域が違うだけで、人は皆「何かしらのオタク」なのであり、「オタク」でいさせてくれる対象がある人のことを「幸せ者」と呼ぶのでしょう。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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