写真が語るトランプ政権「集団感染」発生した訳 マスク着用やソーシャルディスタンスなし

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【トランプ政権の行動】9月30日、トランプ氏はスタッフや議員らとともにエアフォースワンに搭乗し、資金調達イベントと選挙集会のためミネソタ州に飛んだ。その晩、体調を崩したヒックス大統領顧問は帰りのフライトで他の搭乗者と離れてエアフォースワンの最後部に座った。

9月30日、エアフォースワンでミネソタ州に向かう大統領顧問のヒックス氏(写真右)と、トランプ陣営。この旅行中にヒックス氏は体調不良を訴えた。P印はこれまでに新型コロナウイルス陽性と判定された人(写真:Tom Brenner for The New York Times)

ヒックス氏が症状を自覚し始めた日からさかのぼって2日の間に同氏と濃厚接触した人は、本来なら全員が自主隔離とならなければおかしい。

ところがトランプ氏とその側近は、ヒックス氏の病状を知りながら翌10月1日にニュージャージー州ベッドミンスターへと飛び、屋内での小規模な懇談会に続いて、屋外で大規模な資金集めイベントを行った。ヒックス氏が検査で陽性判定を受けたとブルームバーグ通信が報じたのは、その晩だ。2日未明、トランプ氏は自らも検査で陽性となったことを明らかにした。

トランプ氏とヒックス氏の感染が判明した後も、両名と濃厚接触状態にあったマケナニー報道官は自主隔離することなく仕事を続けた。トランプ氏の陽性が確認された翌日にはホワイトハウスの芝生の上でマスクを着けずに記者会見を行い、その週末も仕事で職場に現れた。マケナニー氏は後に、世の中に欠かせない職務に従事する「エッセンシャルワーカー」として振る舞ったと述べたが、5日に検査で陽性となったことを明らかにした。

マーク・メドウズ大統領首席補佐官とダン・スカビーノ・ジュニア副補佐官は、トランプ氏と繰り返し接触していたにもかかわらず執務エリアのあるウエストウイング(西棟)で職務を続けた。ふたりともウォルター・リード陸軍病院に入院するトランプ氏に同行。トランプ氏が陽性と判定されてから6日しかたっていない7日に職務復帰したときには、トランプ氏とともにオーバルオフィス(大統領執務室)に入った。

感染しても自己隔離に従わない大統領

【当局のガイドライン】CDCによると、新型コロナのウイルス検査で陽性反応が出た人は最低10日間、あるいは症状が最初に現れた時点から最低10日間は自己隔離を行うことになっている。

【トランプ政権の行動】公式発表によれば、トランプ氏は10月1日に検査で陽性となった。つまり、トランプ氏は最低でも11日まで自主隔離する必要があったということだ。たとえ症状が消えたとしても、である。

にもかかわらず、トランプ氏は4日に自主隔離を中止して護衛のシークレットサービスを伴って車で外出し、車内から手を振るなどして支持者の声援に応えた。翌5日には大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」でホワイトハウスに飛び、マスクを着けずにホワイトハウスに戻った。他者への感染予防を目的としたガイドラインを堂々と破ったのである。5日、ホワイトハウスに向かって歩くトランプ氏の姿を捕らえた映像を見ると、カメラマンを含む何人かがトランプ氏のすぐ近くにいたことがわかる。

(執筆:Lauren Leatherby記者、Amy Schoenfeld Walker記者、Larry Buchanan記者、John Keefe記者)

(C)2020 The New York Times News Services 

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