日本にとって「財政赤字拡大」よりヤバい事態 コロナ危機を脱するにはMMTを活用せよ
この誤った思考に基づいて、日本政府は1997年、2014年、2019年に消費税率を引き上げた。そのたびに消費支出は急激に落ち込み、売り上げは急減し、経済はマイナス成長に陥った。新型コロナを別にすれば、この先数カ月および数年の日本経済にとっての最大の脅威は、こうした政策の失敗が繰り返されることだ。
というのも実際には先に挙げた増税は、国の財政の安定化にいっさい必要がなかったからだ。いずれも誤った事実認識に基づいており、経済に破壊的影響を及ぼした。端的に言えば、財政赤字の神話に基づいていたのである。
MMTは日本ですでに現実になっている
日本政府には、国民のためによりよい未来を実現する大いなる力がある。よりよい未来を勝ち取るのは、容易なことではない。昔ながらの凝り固まった発想は、おとなしく道を譲らないはずだ。
古い経済学のパラダイムを守ることに必死なエスタブリッシュメント(主流派)は、新たなフレームワーク(現代貨幣理論=MMT)に異を唱え、嘲笑することさえあるだろう。しかし、健全な経済、高い成長率、賃金の上昇、適度なインフレを生み出すのに失敗してきたのは、まさにその古いパラダイムなのだ。戦いはすでに始まっている。
ウォールストリート・ジャーナルは「日本はMMTと赤字をめぐる世界的議論の中心にある」と書いている。麻生太郎財務相は、MMTを採り入れるのは「極めて危険なことになりうる」と主張してきたのに対し、MMTはすでに日本で現実となっているとみる政治家もいる。
例えば、自民党の西田昌司参議院議員は麻生氏に対し、「(MMTを採用・実験するようなつもりはないと言っているが)それは大間違い。実はしている、もうすでに」と語っている。2人のMMTの捉え方は、一部誤っている。MMTは動詞、すなわち政策当局が採るべき単一、あるいは一連の行動を表す言葉ではない。通貨制度や、国家の財政および金融に関わる活動を支える法的・制度的取り決めを描写する形容詞だ。
MMTは政府が実施すべき特定の政策を示すものではないが、非自発的失業という個別の問題に対しては解決策を提示している。具体的には、働く意欲があっても就業できないすべての人に仕事を提供すると、無期限に約束することだ。
それに加えてMMTは、日本政府のような主権通貨の発行者は増税によって歳入を増やさなくても、医療や年金のコストを必ず賄えることも示している。政府支出の制約となるのは、つねにインフレだ。財政赤字と政府債務を制約要因として扱ってはならない。
支出そのものが過剰にならないかぎり、財政赤字と政府債務は高水準にとどまっても増加しても構わないし、それがマイナスの影響を引き起こすことはない。このMMTの中核となる考え方を日本ほど立証してきた国はない。
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