日本株の先行きで米大統領選より気になること アメリカの中期の株価見通しは上昇基調で不変

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というのは、S&P500指数採用企業の、12カ月先までのEPS増減益率予想(アナリスト予想の平均)をみると、今年5月には、19.8%減益(最近で最も悲観的な予想値)が見込まれていた。

しかし当初懸念したほど収益の状況は悪くないとして、直近10月9日時点では、アナリストの予想値は、10.4%減益まで大きく上方修正されている。一方、TOPIX採用銘柄(東証1部全銘柄)で同様にみると、今年7月に27.4%減益まで見通しが悪化した。そこで減益率予想値は下げ止まってはいるものの、10月9日時点でも、25.3%減益予想と、最低値からの上方修正幅は、ごくわずかだ。

日米の企業収益見通しの修正動向の格差は、単にアメリカのアナリストたちが、大きく予想値を変えているだけだ、ということだけかもしれない。しかし底流には、コロナ禍があろうと経済環境がどうであろうと、それに不平不満を言っている暇があったら稼ぎに行く時間に使う、といったアメリカ企業のフロンティアスピリッツがあるのかもしれない。

また、前出のアメリカのさまざまな投資家たちからは、「日本にはフェイスブックやアマゾン、アップルなどに相当するような、投資対象として有望な企業がないね」と言われてしまう。

外国人投資家のような目で日本人も考えるべき時

こうした指摘からは、ある意味さびしいことに「アメリカのIT銘柄の株価が崩れる局面では、日本株はあまり売り込まれない」という結果を推察できそうだ。だが、逆に言えば今後アメリカで企業の自助努力による収益改善を背景に株価が上昇基調をたどる際には、日本株は強含むとしてもアメリカ株に置いて行かれる、ということにはならないだろうか。

もし、海外投資家が日本株の見直し買いを行なうとすると、菅政権が改革路線を推し進める場合が考えられる。行政を改革し効率化するとともに、民間企業を縛る規制を廃し、自由競争路線を拡大させれば、やる気があり現状よりも高みを目指す経営は自社の収益を大いに拡大させそうだ。だが、一方では今の地位に安住し前例を踏襲して冒険をしない企業が淘汰されていく、という展開が訪れるかもしれない。

そうした状況は、個々の日本人が幸せかどうかはまったく別として、海外投資家には理解されやすく、好感されやすいだろう。日本経済における分配の問題や、個々人の生活について客観的にどうなっていくか、あるいはどうなるのが望ましいか、という議論と、日本の株価が上がるか下がるか、という議論は、しっかりと切り分けつつ、熱い心と冷めた頭をもって、われわれ日本人が真剣に考えるべき時になっているのだろう。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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