(第4回)金融面と実物面で世界的なバブルが拡大

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 アメリカが貿易赤字を拡大する半面で、日本、中国、産油国の貿易黒字(純輸出)は拡大した(同期間の日本の実質純輸出は8・2倍に拡大)。その黒字は、資本取引を通じてアメリカに還流した。これが住宅価格バブルをあおった可能性もある。

日本は貿易黒字の拡大で、経済成長を実現した。しかし、図に見るように、消費支出の伸びはGDPの伸びの7割程度でしかなく、住宅投資の伸びはマイナスだった。経済は拡大したが国民が豊かになったわけではないといういびつな成長であった。

ここで「国内総生産=国内支出+貿易黒字」という関係を想起しよう。アメリカは、貿易赤字を拡大することにより国内総生産の伸びを超える国内支出の伸びを実現した。それに対して日本は、貿易黒字を拡大することで国内総生産を拡大したので、国内支出の伸びはそれより低い値にしかならなかったのだ。

以上をまとめれば、次のようになる。第一に、アメリカのブームは、金融面だけで生じたものではなかった。実物財に対する需要も、住宅価格の値上がりを通じて増えたのである。証券化商品への投資が増加したのは事実だが、それは経済変動全体の一部でしかなかった。

第二に、アメリカ国内支出の増大は、アメリカの貿易赤字を拡大した。それは物財の輸出入、資本取引、為替レートの変化などを含む複雑な国際取引を通じて、世界的な広がりを持つ変化を引き起こした。金融的な要素と実物的な要素が複雑に絡み合い、互いが互いを増幅しつつ進展したのである。

金融危機がアメリカ金融機関だけの問題にとどまらず、輸出国である日本が大きな影響を受けたのは、このようなメカニズムによる。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。


(写真:今井康一)
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