サッカー代表戦「綱渡りの9日間」の重大な価値 「コロナと共存」しながらの新たな形を模索

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前述の通り、2020年に予定されていた3・6月の代表活動は2次予選で、4試合中3試合がホーム開催(豊田・神戸・大阪)。9月も最低1試合はホーム開催になるはずだった。

ホームでの代表戦の場合、全体の平均値とみられる6000円のチケットで4万人が入ったとすれば、入場料収入だけで2億4000万円。それにテレビ放映権料が1億円程度プラスされ、スタジアム内でのユニフォーム・グッズ収入なども入ってくる。

今でこそ代表人気が下降線をたどっているといわれるが、本田圭佑(ブラジル1部・ボタフォゴ)や香川真司(無所属)らが大活躍していた2010年南アフリカ大会から2014年ブラジル大会までの4年間はつねに超満員の観客が入り、すさまじい人気を誇っていた。

「コロナと共存」しながらの代表戦

今回はオランダでの無観客開催で入場料収入はないし、グッズなど関連収入も入ってこない。協会主催試合ということでスタッフの渡航費や運営費などさまざまな負担も生じるため、金銭的メリットはテレビ放映権料くらいだろう。

だが、「これからコロナと共存しながら代表戦を再開していく」という強いメッセージは発信できる。そこは今後に向けて大きなインパクトになるはずだ。

11月のIMDは日本政府が定めている入国時の2週間の自主隔離が解けていないと見られるため、欧州組メンバーを帰国させることもできず、海外から対戦相手も呼べない。仮に規制が緩和されたとしても、国内で代表戦を開催するのはまだまだリスクが高そうだ。

ホーム代表戦開催は絶望的だが、2021年には1年延期された東京五輪も開催されるため、代表活動の場が増えていく。こうした活動を通常に近い形で行っていくためにも、今回のオランダ2連戦を成功させ、日本代表の価値を再認識させることが肝要だ。

スポーツ界の復興・東京五輪開催・代表強化・協会の経済的側面……と、複数の観点から見逃せない今回のオランダ2連戦。まずは選手たちが9日のカメルーン戦で闘争心あふれる戦いを披露することからすべてが始まる。

幸いにして、カメルーンという国は、2010年南アフリカワールドカップ初戦で本田圭佑の劇的ゴールで撃破したゲンのいい相手。チーム全体に漂っていた不穏な空気を一瞬にして打ち破ったあの10年前の再現を、ぜひとも期待したいものだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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