トランプ「もしも」の場合に待ち受ける想定外 選挙戦から撤退すれば、事態は未知の領域に
新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領が職務遂行不能になるか、在任中に亡くなる可能性はわずかなりともある。症状が悪化すれば、の話だ。
その可能性は低いと見られており、トランプ氏が治療のためウォルター・リード米軍医療センターに搬送された10月2日、アメリカ政府内でもこの件に関する議論はほとんど聞かれなかった(編集部注:トランプ大統領は5日に退院)。一方で合衆国憲法と議会は、選挙で選ばれた大統領が職務遂行不能に陥った場合に備えて、国を敵対勢力や内紛から守る権力継承ルールをかなり以前から整備している。
合衆国憲法は、大統領が在任中に死亡した場合の継承順位第1位は副大統領であり、大統領が職務遂行不能となった場合には副大統領が臨時に大統領の職務を引き継ぐことができると明確に定めている。ペンス副大統領(61)は2日にコロナウイルス検査を受け、陰性だった。
法廷見解が別れる場合も少なくない
だが、それ以外の状況になると事態は一気に複雑化する。大統領が職務遂行不能となりながら権力の委譲を拒んだり、大統領選挙に勝利したものの職務が遂行できない状況となったり、あるいは正副大統領が2人とも執務不能となったらどうなるのか。そうした場合の対応については、法的な見解が分かれており、混沌の渦に巻き込まれる可能性がある。
以下、具体的に見ていこう。
トランプ氏が死んだり、執務不能になったりしたら?
法的に対応が最もはっきりしているのは、大統領が死亡したり、辞任しなければならなくなったりした場合だ。合衆国憲法修正第25条にはこう書かれている。「大統領が免職され、死亡しまたは辞任した場合には、副大統領が大統領となる」。
このような形で副大統領が大統領に昇格するのは、それほど珍しいことではない。大統領死亡により副大統領が大統領となった事例はアメリカ史上8回ある。1963年にはケネディ大統領の暗殺を受けてジョンソン副大統領が、1974年にはニクソン大統領の辞任を受けてフォード副大統領が大統領に就任している。