トランプ「もしも」の場合に待ち受ける想定外 選挙戦から撤退すれば、事態は未知の領域に
「これは悪夢のシナリオだ」とゴールドスミス教授は話す。「というのは、憲法のこの部分が初めて現実の試練にさらされることになるからだ」。
正副大統領の両方が一時的に職務遂行不能の状態に陥った場合の展開も見通せない。この問題を調査しているのが、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所で議会を研究対象とするノーマン・オーンスタイン氏だ。同氏によると、そうした状態になれば、大統領首席補佐官や国務長官などの間で、臨時大統領の座をめぐる激しい争いがいとも簡単に勃発しうる。
「指揮命令系統が不明瞭になると、深刻な事態となりかねない。自身こそが権力を持つと主張する者同士が対立すれば、政府は権力争いに引きずられて当てもなくさまようことになる」と、オーンスタイン氏は指摘する。
トランプ氏選挙戦撤退なら大混乱に
トランプ氏が選挙戦から撤退を余儀なくされたら?
この場合は、すぐさま大混乱となる。
まず、共和党全国委員会は新たな候補者を指名しなければならなくなる。それにはマクダニエル委員長と各州・準州から3人ずつ選ばれている168人の全国委員の関与が必要となる。ところが、多くの州ではすでに投票用紙の印刷・送付、郵便投票が開始され、さらに一部の州では投票所での期日前投票も始まっている。新たな候補者の名前が印刷された投票用紙を大統領選挙当日までに用意できない可能性もある。
となると、具体的な対応は各州の判断にかかってくるが、大半の州にはこうした事態を想定した規定がない。
「このような不測の事態に関して、各州の法律に何と書いてあるか、もしくは何が書かれていないか、の問題になる」と、カリフォルニア大学アーバイン校法学部のリチャード・ハセン教授は言う。同教授は選挙法を扱った自身のブログでもこの問題を論じている。「たいていの州の法律には、こうした状況について何の言及もない。つまり、どうしたらいいかわからない、ということになるのではないか」。
さらに厄介なのは、トランプ氏が大統領選挙に勝利しながら職務遂行が不能となった場合だ。多くの州(すべての州ではない)では、選挙人に対し、一般投票でその州を制した候補に投票するよう拘束する規定を設けているが、候補者が死亡したり、職務遂行不能の状態になったりした場合の対応については何の規定もないのが普通だ。
この問題は、選挙人団による投票結果の認証を行う議会に解決が委ねられるか、もしくは法廷で争われることになる可能性がある。
(執筆:Nicholas Fandos記者、Nick Corasaniti記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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