トランプ「もしも」の場合に待ち受ける想定外 選挙戦から撤退すれば、事態は未知の領域に

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大統領を解任することはできるのか?

憲法修正第25条では、大統領を強制的に解任することも許されている。ここには権限を委譲できないほど病状が悪化した場合、あるいは権限の委譲を拒んだ場合も含まれる。

この条項は、ありえない仮定ではなく、実際の出来事に基づいて書かれている。ウィルソン大統領は1919年に脳卒中を起こし、その後の任期には半身不随、視野欠損という重い後遺症が伴ったが、この事実は大部分伏せられていた。

正副大統領が執行不能になった場合は大変

修正第25条は副大統領に、行政各部の長または連邦議会が定める機関の長とともに介入する権限を与えている。これらのいずれかが過半数をもって大統領は「その職務上の権限および義務を遂行できない」と判断し、その旨を下院と上院に通知した場合、「副大統領は、直ちに臨時大統領として、大統領職の権限および義務を遂行するものとする」と定められている。過去にこの権限が行使されたことはなく、政治的な判断が行使の妨げとなる可能性もある。

この代理状態は、大統領が連邦議会に対して「職務遂行不能状態は存在しない旨」を通知し、義務を遂行できるようになるまで続く。大統領から権限を奪う判断を行った長がこれに異議を唱えた場合、判断は連邦議会に任され、下院と上院の3分の2以上が同意した場合、大統領に権限は戻されない。

権力の所在をめぐって争いが起こった場合は?

大統領職の継承順位は法律で明確に定められているが、この規定は違憲の可能性があると論じる法律学者もいる。正副大統領がともに執務不能となった場合には、極めて深刻な問題が持ち上がる恐れがあるということだ。

一部の憲法学者からは、下院議長と上院議長代行に大統領職を継承する権限があるのかどうか、正当性を疑問視する声が出ている。憲法の立案者は、行政府(憲法での英語呼称は「オフィサー」)にのみ、その権限を与えることを意図していたはずだ、という議論である。

ハーバード大学法科大学院のジャック・ゴールドスミス教授は今年、この重箱の隅を突くようにも思われる議論によって衝突が生まれるかもしれないと警告した。具体的には、ペロシ下院議長と、行政府で副大統領に次ぐランクとなっているポンペオ国務長官との間で、大統領継承順位をめぐる争いが起きる可能性がある。

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