佐藤二朗「僕が入社1日で大手企業を辞めた訳」 スーツを着て演劇もする暗黒の20代を超えて
『笑福亭仁鶴50周年記念ドラマ だんらん』の脚本を書かせてもらったときに、その話を生かして、あるセリフを盛り込ませてもらいました。おじいさん役の近藤正臣さんが孫役の菅田将暉くんに将棋を指しながら、関西弁でこう言うんです。
「血ィが必死になって傷を補おうとする。それが、生きる力や」
傷つき悩むとき命が燃えている
自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃいいシーンです(笑)。鍼治療と同じことは人生にも言えるかもしれません。傷つくとか、自分のこだわりで悩むとか、ものすごくめげるとか、それって命を燃やしていることかもな、と。
20代の僕なんか、ほんとバカみたいに突っ走って、夢と現実の狭間で、もがきながら生きていました。たくさん傷ついて、たくさんめげてきて、今となっては思い出したくない日々です(笑)。メンタルに悪い生き方をしていたと思います。
でも、人間は時に、そういう生き方をしてもいいんじゃないかって思うんです。往生際が悪く、生きていいんです。そうやって、命を燃やして生きることが輝きに変わることもあるんじゃないでしょうか。
――とはいえ、渦中にいるとき、まわりの人は心配すると思います。今子どものことで悩んでいる親に対して、佐藤さんからアドバイスはありますか?
あまり子どもといっしょに悩んで沈んでしまうと、その子の帰れるところがなくなってしまう気がします。もちろん、子どもが苦しんでいることを軽視すると、本人は傷つきます。
だから、本人が苦しんでいることには敬意を払いつつも、親自身はマイナスな意識から遠ざかる。そうなると、子どもの状態がよくなったときに帰れる場所があるじゃないですか。
そんな距離感が、親と子ではいいのかなあ。僕も今、子育ての最中だから、わかんないけど。
――ありがとうございました。
(聞き手・木原ゆい、石井志昂/撮影・矢部朱希子)
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