なんでも「正解」が欲しい日本人に足りない視点 オックスフォード大学式チュートリアルとは
毎週新しいテーマに関する文献を大量に読むことによって、テーマを理解して言語化し、論点を整理します。何十年、何百年もかけて積み上げられた先行研究の内容を「自分の言葉」で表現する作業です。それをもとに、いままでに何が明らかになっていて、どんな課題があるのかという点について、自分なりの結論を出して小論文にまとめます。オックスフォードではこの作業を1年間で8週間×3学期=計24週間繰り返します。
完成した小論文を教授に提出すると、チュートリアルが始まります。教授によく聞かれたのは、「それはどういう意味?」という質問でした。この単純な質問を繰り返されると、不明確だった部分が明確になっていきます。自分の中できちんと理解できている場合はそれなりに回答できるのですが、理解できていない場合はうまく言葉にできずに説得力のある答えができないからです。この質問のおかげで、自分の理解の曖昧な点を明らかにすることができます。
答えは1つではないことを知る
次に聞かれたのは「どうしてそういう結論になったのか?」ということでした。この質問によって、全体の論理展開に矛盾がないか、自分の考えのもとになっている前提は何かを確認していきます。
そのうえでさらに、洞察を深めていきます。自分の理解や情報が足りない点をクリアにしたうえで、さらにどう思うか聞かれたり、「こういう別の見方もあるけど……」と、反対意見に対する考えを求められます。自分とは違う意見と比較することで、自分の視野や選択肢を広げ、そのうえで改めて「自分にとっての結論は何か?」をよりはっきりさせることが狙いです。
こうしたプロセスの中で、唯一の答えを求められることはありませんでした。むしろ、答えは1つとは限らず、多彩な視点があってよいことが強調されます。そして、「誰も1人では理解を深めることはできない」という前提のもと、自分とは違う意見にオープンに耳を傾けて、自分自身の思考プロセスを確認する作業を続けるように促されました。
チュートリアルでは、クラスメートの存在や教授からの「なぜその結論になったの?」という問いかけのおかげで、「なぜあなたはそのテーマに興味があるのか?」といつも自分の根源について問いかけられているような気になったものでした。
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