「アイドルマスター」誕生15年で見えた新境地 ファンを熱狂させる次元を超えたMR技術の進化

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MRなどの新技術を活用したアイドルマスターのイベントについて語る勝股春樹氏(記者撮影)

勝股氏は「ライブの代わりにどうにか楽しんでもらうにはどうすれば良いかと模索していたところ、(ライブ配信サービスを手がける)SHOWROOM側からお話をいただいた。同社のエンジニアがアイマスのプロデューサー(実際のファン)で、ライブ中止を残念がっていたのだという」と経緯を話す。

ライブ配信では、会場でのリアルイベント開催のようにチケット収入を見込むことは難しい。今後の収益化については「あくまでファンコミュニティーを大切にすることが第一。ギフティング(投げ銭)などライブ配信ならではの方法もあるが、収益化を最優先にとは考えていない」と勝股氏は話す。

一貫してきた「手作り感」

これまでアイマスのイベントが大切にしてきたのは、“手作り感”だ。2006年に開催された最初のイベントの会場は、東京の赤羽会館という文化センター。アイドルの声優とのファンミーティングのような形だった。当時はアイドルとそのプロデューサーたちがどのように集まってイベントを作ることができるのか、まったくの未知数だった。そこから10年以上をかけて大規模イベントを開催するまで成長したが、運営側がファンコミュニティーを手作りしたいという思いは、今でも一貫している。

2017年10月に日本武道館で開催された、国内初の合同LIVE「 THE IDOLM@STER 765 MILLIONSTARS HOTCHPOTCH FESTIV@L!! 」(写真:バンダイナムコエンターテインメント)

「収容人数の多い大型ドーム公演をやるようになっても、MRライブでも、手作り感を重視することに変わりはありません。ゲームのユーザーがリアルで集まることのできる場を作ること。これを私たちは”同好の士の集い”と呼んでいます。アイドルがいいパフォーマンスを見せる、それに観客が反応する、一期一会の体験を一緒に作ることが重要」(勝股氏)

これまで、MRライブを実施していたDMM VR THEATERは物件の契約期間満了で2020年4月末に閉館となった。今後リアルな場でのMRライブ開催は現時点では未定となっている。だが、今回のSHOWROOM生配信のように、リアルで感情移入しやすいライブ感や臨場感を提供することができれば、それが新たな交流の場となる可能性もある。

バンダイナムコホールディングスではキャラクターからの収益を増やすために全社としてライブ事業の育成を図ってきた。同社の強みは、自社のIPをデジタルとリアルの双方を活かすことができる戦略にある。

コロナ禍でのゲーム業界は、巣ごもり消費を追い風に大きく業績を伸ばした企業が多い中、バンダイナムコHDは減収減益だった。これはゲームを中心としたデジタルビジネスが前年同期比で大幅増だったものの、イベント中止やアミューズメント施設の一時休業などリアルビジネスが落ち込んでしまったからだ。今回のアイドル生配信のように、リアルイベントの開催が難しい中で、収益を生み出す新しい仕掛けを提供できるかは重要といえる。

アイマスシリーズは、家庭用ゲームのPS4とPC向けの新作ソフトが発売される予定だ。「アイドルマスター」という15年にわたり育ててきたIPは新技術の活用や異業種との組み合わせで、よりリアルな存在に近づきつつある。次元を超えたアイドルたちの活躍はとどまるところを知らない。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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