最高裁判事の死でトランプが息を吹き返すワケ 最高裁判決がアメリカ社会のあり方を決める

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ギンズバーグ判事の死後、最高裁は5人が共和党大統領により指名された保守派判事、3人が民主党大統領により指名されたリベラル派判事となった。ただし、共和党大統領に指名されたジョン・ロバーツ最高裁長官は判決でリベラル派側につく場合もある。だが、共和党がもう1人保守派判事を指名承認できれば、保守派6対リベラル派3となり、確実に最高裁は保守にシフトする。

2016年大統領選では同年のアントニン・スカリア最高裁判事の死で、後任判事が注目されていた。同選挙のCNN出口調査では69%の全投票者が投票の判断について、最高裁判事任命が重要であったと回答し、うち21%は最も重要であったと回答している。最も重要であったと回答したトランプ候補支持者の割合はクリントン候補支持者の割合を15ポイントも上回っていた。

2020年大統領選でも、トランプ支持者のほうが最高裁判事指名に関心が高く、共和党に有利に働く可能性がある。トランプ政権下での共和党は、最高裁判事を筆頭に裁判官の承認をめぐる活動に注力しているからだ。2人の最高裁判事に加え、210人を超える連邦巡回控訴裁判所や連邦地裁の裁判官の承認にこぎ着け、司法の保守化という成果を上げている。任期1期目でここまで多くの連邦裁判官を指名承認した大統領は民主党のジミー・カーター大統領以来となる。

保守派は「アメリカ社会のリベラル化」に危機感

マコネル院内総務の協力があったことが大きいが、司法の保守化はトランプ大統領の最大のレガシーになるかもしれない。トランプ大統領および共和党が、民主党よりも司法戦略を重視していることは、8月の各政党の全国大会でも顕著であった。民主党全国大会では最高裁判事任命について言及される場面はほぼ皆無で、チャック・シューマー上院院内総務がわずかながら触れた程度であった。だが、共和党全国大会では繰り返し登壇者が保守派判事の任命の重要性を説いた。

共和党のほうが判事承認について真剣に取り組んできた背景には、共和党保守派が「アメリカ社会のリベラル化」に危機感を抱き、「リベラル化を食い止める最後の砦となるのが最高裁である」と認識していることにある。

今日のアメリカ政治は最高裁にまで影響が及んでいる。アメリカ社会の二極化が進行していることで、議会あるいは大統領府の政策について、民主党支持者あるいは共和党支持者のいずれかが争いを司法に持ち込むケースが増えているのだ。とくに議会の膠着状態が続いているため、最高裁判決が社会を変えうる政策を決めるという事態が頻発するようになった。その結果、最高裁の判決の行方、そして最高裁判事の政治思想にも国民は注目している。

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