最高裁判事の死でトランプが息を吹き返すワケ

最高裁判決がアメリカ社会のあり方を決める

ギンズバーグ判事の死は、2つの変化を大統領選にもたらした。第1に「新型コロナ問題の重要性の低下」、第2に「中長期的なアメリカ社会の方向性を決めるとの認識の高まり」である。戦況は大転換する可能性がある。

まず、1点目の新型コロナ問題の重要性低下について。今春以降、大統領選は新型コロナの流行およびそれに伴う不景気、大統領の失策が重大争点となり、トランプ大統領の劣勢が続いていた。連日、新型コロナがトップニュースとして取り上げられる状況が続けば、バイデン候補がリードを保ったまま逃げ切るともみられていた。

だが、ギンズバーグ判事の死は、大統領選の流れをリセットする公算が高い。仮に大統領選前に最高裁判事任命問題が起これば、選挙戦に多大なる影響を及ぼすことは、7~8月に実施されたピュー研究所の世論調査で、すでにうかがえた。同調査では、経済(79%)、医療問題(68%)に次いで3番目に有権者が重視するのが最高裁判事任命(64%)という結果であった。これから一気に選挙で最大の争点に浮上することも大いにありうる。

新型コロナ感染によるアメリカの死者数はギンズバーグ判事の死の直後に20万人を超え、首都ではワシントン記念塔の周囲に2万本の星条旗が飾られ、追悼が行われた。だが、メディアではギンズバーグ判事の死の報道に隠れ、これがほとんど話題にならなかった。

大統領選が新型コロナ対策をめぐる大統領の信任投票ではなくなり、次期最高裁判事が争点となることはトランプ大統領には救いとなる。トランプ大統領支持を躊躇していた共和党支持者も、自らの思想により近い保守派判事の指名を期待して、トランプ大統領に票を投じるかもしれない。

二極化社会で最高裁判事の影響力は大きい

第2点目の、中長期的なアメリカ社会の方向性を決めるとの認識の高まり、ということについて説明したい。

日本では最高裁判事の定年は70歳だが、アメリカでは判決への政治的な影響を回避するため、その身分が終身保障されている。トランプ大統領が指名すると思われる最高裁判事の最有力候補2人はいずれも50歳前後で、連邦控訴裁のエイミー・コニー・バレット判事(48)とバーバラ・ラゴア判事(52)だ。仮にギンズバーグ判事と同じ87歳まで務めれば、約35~40年もアメリカ社会に影響を及ぼすこととなる。

大統領選後に最高裁判事が指名承認される場合、共和党保守派にとって大統領選は、トランプ大統領の在任期間をもう4年ほど延長するものというより、将来のアメリカ社会を方向づける最高裁判事を決めるもの、という意味を持つことになるともいえる。

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