日本と大違い、国が鉄道を救済する欧州の現状 コロナ禍の支援、環境問題対策とセットの国も
フランスは都市間輸送を高速列車TGVへ置き換え、欧州でいち早く夜行列車削減へと動いた国だ。
だが、オーストリアの「ナイトジェット」の成功により、近年は距離や所要時間次第で夜行列車も十分な競争力を保てることが実証され、加えて昨今の環境問題が追い風となり、夜行列車復活へと舵を切らざるをえなくなった。欧州大陸間を結ぶ主要路線は、列車の本数増加に備え、軌道強化や変電設備増強など、インフラ投資にとくに力を入れる予定となっている。
このように、ドイツとフランスの両国に共通していることは、昨年まで話題の中心にあった環境問題への対策がセットになっていることだ。昨年、まだコロナ騒動が発生する以前の段階で、「Flygskam(飛び恥)」という言葉が飛び交ったことを覚えている人も多いだろうが、鉄道インフラに対する投資は、環境問題への対策も兼ねているのだ。
図らずも、コロナ騒動によって航空業界は大打撃を受け、短距離便を中心に大幅な減便となるなど、環境団体にとっては思惑通りの展開ともいえる。両国政府にとって鉄道を支援することは、環境問題への対策を怠っていないという国民や周辺国へのアピールにもなる。
「元国鉄」支援には批判も
一方で、政府による鉄道支援には不公平な部分があると批判する声が、今も相変わらずある。
約60社の独立系鉄道貨物事業者協会であるNetzwerk Europäischer Eisenbahnen(NEE)は、「(政府による支援は)元国営企業を一方的かつ独占的に支持しており、これはコロナ騒動に関係なく、元国営企業の本来の構造的問題に起因する赤字を解消させているにすぎない」と糾弾した。
すなわち、コロナ騒動によって支援を必要としている民間企業よりも、コロナ以前から赤字体質だった元国営企業を優遇し、コロナとは関係のない赤字までも補填しているというのだ。それは長い目で見れば、元国営企業が民間企業より優位に立ち、現在の状況が長引けば、市場がモノポライズされる可能性も否定できない。
鉄道インフラ維持とそのための投資は、今後の経済活動の基盤として必要不可欠なことに間違いないが、そこに官民の間で公平性を保つことが、今後の課題と言えよう。
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