規制改革会議が狙う混合診療解禁の無理筋 「選択療養」の提案に厚労省、患者団体などが反発

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混合診療については、無制限に認めた場合、科学的根拠のない医療が広がりうることや、患者に保険外で法外な費用負担を求める事例が一般化しかねないことなどを理由に、原則禁止とされている。

その一方で、2004年12月の厚生労働相と規制改革担当相の合意に基づき、「国民の選択肢を広げ、利便性を向上する観点」から、「保険外併用療養費制度」が“健康保険法で例外的に認められた混合診療”として設けられた。

保険外併用療養費制度の一例である「先進医療」については、厚労省が任命した専門家が安全性や有効性を確認したうえで、一定の施設基準を満たした医療機関だけが実施できる。その実施過程で、将来、健康保険の適用をすべきかが評価される。つまり、保険診療に移行するまでの過渡的措置という意味合いだ。海外で承認されている医薬品が使えない「ドラッグラグ」問題の解決策としても、同制度は拡充されてきた。

安全性の確保が焦点

混合診療問題は04年にいったん決着したが、その後、規制改革会議は再び抜本的な制度改革を求め始めた。そして今回、患者と医師の合意に基づく簡単な手続きだけで保険外併用療養費の支給を認めるべき、と初めて提案した。

もっとも、実施できる医療機関を限定せず、安全性や有効性の確認の手だてが十分でないという点で、規制改革会議の要求は無理難題に等しい。混合診療問題に詳しい日本福祉大学の二木立学長は、「選択療養は、今までの混合診療に関する議論の積み重ねを無視した、ずさんで穴だらけの提案。実現可能性はまったくない」と解説する。

厚労省などの反論を踏まえて、規制改革会議は4月16日の会合で譲歩案を提示。「合理的な根拠が疑わしい医療や患者負担を不当に拡大させる医療を除外するため」として、(1)国際的に認められたガイドラインに掲載されている、(2)一定レベルの学術誌に掲載され査読された2編以上の論文がある、(3)倫理審査委員会の承認を得ている、の3要件のうち、いずれも満たさない場合には選択療養の対象から外すと表明した。

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