100ドルカメラの限界、中国市場に広がる異変、売れ筋が高級品に

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100ドルカメラの限界、中国市場に広がる異変、売れ筋が高級品に

春節(旧正月)の中国。買い物需要の高まるこの時期、電機専門店街をにぎわすのは、圧倒的に安い600元(約8000円)のデジタルカメラ。富士フイルムホールディングスが昨夏投入した新興国モデル「A170」だ。

中国のコンパクトデジカメ市場は2009年の出荷台数1000万台と、日本を超えた。近く米国並みの3000万台になると見られている。

有望市場の攻略に向けて投入されたA170。富士はレンズ以外をすべて外注するという徹底したコスト削減で、低価格でも利益が出るよう仕上げた。中国のみならず、インドなど新興国を中心に100ドル以下で販売する。

とはいえ、安かろう悪かろうではない。1000万画素に光学3倍ズーム、顔検出機能付きと性能は十分。その代わり、画像加工やスライドショーといった“遊べる”機能は一切そぎ落としている。

滑り出しは好調で、初年度の出荷計画200万台超えはほぼ確実。カメラ事業の期初計画830万台を、900万台近くに押し上げる勢いだ。

富士の思い切った一手には理由がある。09年のコンパクトデジカメ市場は、出荷台数9600万台(前年比1割減)、出荷高1兆1600億円(同3割減、カメラ映像機器工業会統計)。7割をキヤノンやソニーなど上位5社が占める中、富士などシェア数%の6~7社は苦戦を強いられている。需要飽和の先進国では、安売り合戦が過熱する一方だ。

このため各社は新興国に活路を見いだす。日本勢の中で、いち早く廉価モデルの投入でリードしたのが富士だった。

だが中国市場にも異変が起き始めている。「足元では廉価カメラの伸びが鈍っている」と、バークレイズ・キャピタル証券の中名生正弘アナリストは指摘する。安くてそこそこから、高くても一生モノへ売れ筋が変化している。

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