コロナ禍で加速する「大廃業時代」の生き抜き方 これから1年以内に27万社が廃業しかねない!?

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そして、処分価格が負債を弁済する金額を下回ってしまう場合には、通常清算ができなくなる。つまり、簿価上、資産超過と思っていても、清算処理をしていくと負債超過となり、特別清算に移行しなければならなくなる場合が多く見受けられる。

こうして、負債のほうが資産よりも大きい場合に破産や特別清算で廃業をしていくことになる。このケースの最大の問題は、経営者の連帯保証債務である。

経営者は会社の借入金のほとんどを連帯保証している場合が多いから、会社で支払えないものを個人で返さなければならない。それができないときは、経営者も自己破産をしなければならなくなる。

中小企業の経営者には、自宅も預金もすべて自分名義という人が多いから、自己破産をするとそれがすべて取り上げられ、経営者の家族の生活が成り立たなくなってしまう。

若いうちから妻に給与を支払ったり、自宅の一部を贈与したりして、財産の家族内分散を図ってきた人たちだけが、破産後の生活をうまく維持することができる。あらかじめの準備が大きくものを言ってくるのである。

破産に関するもう1つの落とし穴

破産する場合のもう1つの問題は、手続き費用である。破産する場合、申立代理人に着手金を払い、裁判所に予納金を納める必要があり、この2つを合わせると結構な金額になる。地方の裁判所なら300万円とか500万円、東京などの大都市の裁判所で破産しても100万円程度の用意は必要である。

なぜ、こんなに東京と地方で破産費用が違うのか。それは破産件数の多い東京など大都市部の裁判所では、少額管財事件といって、破産者への負担の少ない制度を特別に作っているからである。

こうして費用もかかるし、経営者の生活にも影響が及ぶ破産ではあるが、手続きが終われば、経営者はすべての債務を免れて、二度と債権者に追いかけられることはなくなる。心安らかに平和な生活を送ることができるようになるという、大きなメリットがある。

実質廃業の道を選ぶのは、通常清算も破産もできない経営者である。実態上、負債が資産を超過しているので通常清算を行えず、かといって、手続き費用が捻出できないために破産という選択もできない人たちである。

彼らは、死ぬまで債権者から追いかけられ、精神的に休まることはない。そして、経営者が死ぬと、家族は相続放棄を選択するか、自宅に住み続けるために債務超過でも相続するかという難しい決断を迫られることになる。

こうした事態に陥らないように、経営環境が日々悪化していくコロナ禍の中では、中小企業の経営者にはできるだけ早く判断をしてほしい。余裕のあるうちに廃業の判断を行い、できれば通常清算、最悪でも破産手続きをとり、負債から免責されるように手を打ってほしいと切に思う。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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