TOEICにスピーキングテストを導入せよ 日本の英語教育を変えるキーパーソン ソレイシィ(2)

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スピーキングテストに必要なものとは?

そんな日本の「しっかり感」が、今はまだ赤ちゃん段階のスピーキングテストに対しても、今後、テストの普及とともに備わってくると思います。

スピーキングテストには検討すべき事項が数多くあって、一口にスピーキングテストといっても、パソコンを使うのか使わないのか、どんなレーティングシステム(評価基準)を使うのか、どれぐらいの費用で実施できるのかなど、テストによってさまざまな違いが生まれています。

スピーキングテストの評価法には rubricと呼ばれる複数の評価項目が使われるのが一般的です。私は評価をする人たちと話したことがあるのですが、たくさんの項目を記入するのは骨の折れる作業で、一度の試験で大勢を見なければならず、非常に疲れるとのことでした。それから、halo effect(haloは「天使の輪」を意味する)というのがあるんですね。何かを評価するときに、顕著なよい特徴につられてしまい、総じて高めに評価してしまう心理的な作用のことです。

たとえば、受験者がある程度、スムーズに話し始めて、最初に「おお、いいな」と思うと、「ああ、この人、言っていることもすごくいいな」と採点者のhaloが入ってしまい、チェックリストの複数の項目で機械的に高い評価がずらりと出たりするのです。

逆に、顕著な悪い特徴にばかり目を奪われてしまい、総じて低い評価をつけてしまう場合もあります。出だしのセンテンスふたつ、3つで「何を言っているかよくわからない」となると、「この人はダメだ」という気持ちが働いてしまって、その後の話をちゃんと聞かずに低い評価をしてしまうのです。

このようにスピーキングテストには、公平なレーティングという問題がありますね。それから受験者にとってスコアの差が何に由来するものなのか、わかりにくいというのも欠点です。スコアがどうして80点なのか、90点との10点の差は何なのか、ペーパーテストのようにはっきりとはわかりません。だから、学習効果も見えてきにくいのです。

でも、だからダメということじゃなくて、まずペーパーテストだろうがスピーキングテストだろうが、パーフェクトなテストなんてないという事実があるわけです。しょせんテストはテストでしかないですし。

信頼性、正当性といろいろな問題がある中で、今、いちばんスピーキングテストに足りないのが試験の受けやすさという面ですよね。もっと受験日や受験可能な場所が増えれば、スピーキングテストをもっと広めることができるのではないでしょうか。先ほど安河内さんがおっしゃったように、テストにかかる時間が短くて、さほど高価ではない、といった側面は実用性があると言えますよね。

安河内:TOEICスピーキングテストにも欠点はあると思います。ソレイシィ先生がおっしゃったように、スピーキングテストはまだまだスタートしたばかりで、幼児みたいなものですからね。 まずはTOEICスピーキングテストのような、標準となるテストを広めて、そこから進化することを目指せばいいでしょう。

ソレイシィ先生が作られたスピーキングテストはどういう感じのものですか? SPM Interview Test という名前ですよね?

ソレイシィ:はい、「SPM」とはSentence Per Minuteの頭文字です。1分間当たりの発話率を評価の基準に取り入れたテストです。スピーキングテストにとって重要な点はいくつかあるのですが、まずはテクノロジーの使い方。どのようにテクノロジーを使えば、スピーキングテストがうまくいくかということですね。

(構成:山本 航)

※次回は5月28日(水)に掲載します。

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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