最悪の日韓関係打開へ両国指導者の決意が必要 新政権は早期に韓国と首脳会談を持つべきだ

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――国民とのコミュニケーションの重要性を指摘されました。日韓双方のメディアを中心に、日韓の世論も対立している状況だと感じられますが、そこも改善できるでしょうか。ともに強硬な世論に対韓、対日外交が縛られているようにも見えます。

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民主国家である日韓の政治指導者が世論に敏感なのは当然だ。対外政策が国内政治に大きく左右されるのは日韓だけではなく世界共通の現象でもある。それでも、首相官邸の力が強くなった日本と大統領権限の強い韓国では、外交における政治指導者の役割は依然として重要だ。だからこそ、懸案を抱える日韓関係では、関係改善に向けた両国指導者の決意と同時に、その決意への理解を得ることが意味を持ってくる。世論に縛られるだけでなく、世論を説得するための努力はどの政策でも不可欠だ。

――文政権の外交は北朝鮮との関係改善に集中しています。アメリカ大統領選挙の結果によっても、外交戦略は変わる可能性があります。文大統領は、自身の外交戦略において日米をどのように位置づけているのでしょうか。また、中国とはどのような外交方針をもって、対応しているのでしょうか。

文政権の外交政策の中心にあるのは北朝鮮問題、特に南北関係の改善だ。単純化を恐れずに言えば、対日、対米、対中のいずれも、南北関係にどれだけ影響を及ぼすかが政策を決める際の大事な判断基準となっている。誰がアメリカ大統領になっても、南北融和を目指す文政権の方針に変更はない。

文大統領は南北融和政策を変える気はない

また、日本が対北朝鮮政策で協力的だと文政権が判断していたならば、歴史問題があっても今ほど関係は深刻化しなかっただろう。歴史問題は関係悪化の根本的な原因ではあるが、唯一の原因ではない。

韓国の対中認識は、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)システムの韓国内配置に対する中国の経済報復によって、決定的に悪化した。それを教訓に、経済関係は対中依存を少しでも減らそうと東南アジア諸国などとの関係強化をさらに進めている。それでも中国を重視せざるをえないのは、北朝鮮問題に圧倒的影響力を持っていると見ているからだ。

――日本の新政権が発足すれば、年内までに関係改善に向けた具体的な動きが見られるでしょうか。

年内に開催が予定されている日中韓首脳会議が実際に行われれば、日韓首脳会議も開かれることになり、それが重要な機会となるだろう。逆に、そこできっかけをつくることができず、現在のような日韓関係が続くことになれば、徴用工問題で日本企業の保有資産の「現金化」の火種が燃え上がる。これは最悪のシナリオだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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