最悪の日韓関係打開へ両国指導者の決意が必要 新政権は早期に韓国と首脳会談を持つべきだ
――8年近くに及んだ安倍政権の下で、日韓関係は「国交正常化以降、最悪の関係」に陥ったといわれています。最悪の関係という表現は、実情を正確に表しているでしょうか。これまでの安倍政権下における日韓関係をどう評価しますか。
日韓関係は重層的であり、多様な層・領域から成り立っている。主な領域として、政治、外交、経済、安全保障、人的・文化交流の5つを挙げることができる。これまでは、政治的関係が悪くなっても経済協力や人的・文化交流は順調で、関係の裾野を広げて下支えしていた。しかし2019年7月に日本が対韓輸出管理の運用見直しに踏み切って以降、5つの領域すべてにおいて負の連鎖が起きた。関係の基盤となる両国民の相互認識も極めて悪化し、固着化している。その意味では国交正常化以来の55年間で最も深刻な状況にあると言ってよい。
安倍首相辞任は日韓関係を変える1つの要素
ただし、2国間関係は相手との相互作用の産物である。安倍政権の対韓政策だけではなく、朴槿恵・文在寅政権の対日政策、そして日韓両政権のやりとりが約8年間の日韓関係を作ってきた。安倍首相の退任は関係を規定する大きな要素の1つに変化が生まれることを意味する。
――安倍首相の辞任は、日韓関係にどのような影響を与えますか。
前向きに展望すれば、新首相の登場は関係改善の機会を提供する可能性がある。しかし、新首相が誰になるのかによって、その可能性の高低は異なる。菅義偉政権、あるいは岸田文雄政権になれば、それは「安倍路線」の継承となるため、日韓関係に大きな変化はないだろう。石破茂政権になれば、安倍政権との差別化を徐々に目指すことになり、日韓関係の改善に努力することになるだろう。
しかし、韓国にしてみれば、日韓関係が悪化した原因は安倍首相にあると考えるだろうが、それは本質的な原因であるよりも副次的な原因であるということに留意すべきだ。日韓関係の悪化は、2011年の民主党政権の頃から始まっていた。つまり、慰安婦問題や徴用工問題などの歴史問題に対する、日韓両国の立場の違いが根本的な原因なのだ。それゆえ、日韓が関係改善を本格化させるには、両国が立場の違いを乗り越えていかなければならない。
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